3 そんでも初日はそれなりに

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 寝る前のミーティングで、進路について少しもめた。 「01班は必ず、東寄りに進路を取る」  ベイカーが主張した。 「いや、西だ」  ギガンテは譲らない。 「南にはいい道がない、01班はP‐0208くらいから03班の西ルートに食い込んで来て、後からこっそり辿るんじゃないか? それで、隙をみつけたら、そのままやっつけてやろうと狙うんだ」 「ベイカー、どうして東だと?」  サンライズが聞くと 「明日は午後からかなり暑くなりそうだから……西日を避けるだろう」  さすがもっともらしい答えだ。 「オレは01のヤツらはまっすぐ上っていくと思うぜ、でも02班……『カナリヤ』のヤツらはこっちを狙いにくるだろう」  ホークも自分の考えにこだわっている。 「『カナリヤ』のリーダーはアルファだから、パワーバランスを考えてこっちから潰そうとするだろう、なんせ」  サンライズとヤルタの方をみる。 「はいはい」  ヤルタが吐き出すように言った。 「メガネのチビが二人もいるからね」  他にはたまたま、眼鏡をかけているリーダーはいない。  それに上背の無さ。サンライズは単に痩せているだけと言い訳もできるが、この中の誰もが思っていた……  04班が一番、シーソーに乗った時に舞い上がってしまうだろうと。 「だったら『野蛮人』のヤツらだってこっちを狙いそうだ。そうなると挟みうちになる」  ベイカーは神妙な顔をしていた。 「他を潰そうというんなら、オレたちは確かに狙われる」  彼らは、両脇のルートを行くメンバーを一人一人、思い出していた。  かなり獰猛そうな連中が揃っていた。  しかも、02班と03班は合宿前からチーム名がついていた。  02班は『カナリヤ』、03班は『野蛮人(バーバリアンズ)』だった。  カナリヤって何? と数日前、カナリヤ軍団に属したゾーさんにようやく聞くことができた。 「それは……」  支給されたタグにデータ転送しながらあたりを気にしつつ(合宿までは、あまりおおっぴらに敵どうし仲良くすることがない)教えてくれたことには 「カナリ、ヤバい、の略」  だとのこと。  下馬評では、ゴールに到達できるのはカナリヤ軍団だけなのでは? と言われていた。 「こうしたらどうだろう?」  ホークが考えながら言った。 「ヤルタか、サンライズのどちらかが、へばっていて遅れている、と無線連絡するのは? 他の連中に先に正規の宿泊ポイントに上っていてくれ、と連絡して、一人孤立したと思わせる……」  まず02班の周波数を故意に使って、一人が偽の情報を流す。  そして実際は三人で待ち伏せる。  戦闘が激しくなった場合のことを考え、後の三人は先に上を目指す。  せっかく他チームより一人は数が多いのだから、そこを利用しない手はない。 「いけるかも知れないな……」  ベイカーが少し考えてから、そう答えた。 「それなら」  サンライズも急に思いついた。 「その連絡を、03班にも聞かせたらどうだろうか」 「えっ?」  ベイカーがこんなにフツウに驚くのも初めてみる。 「それで残った三人は隠れて待つ、02班と03班とが、うちのルートでぶつかるのを」 「いいねえ」  ギガンテが、にやりと笑った。 「とにかくやってみよう」  ベイカーが決断した。  とりあえずその晩は、交代で見張りをしながら眠ることになった。
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