4 なんでもこれが戦場で

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 03班『野蛮人』リーダーのアルファ、通信係のクィンテットが偶然他班の通話を拾ったと聞いて、始めは眉をひそめた。 「一人置いて行かれた、って?」 「らしいです」 「何で分かった」 「ソイツが間違えてこちらの周波数を使って……最初だけでしたが」 「あり得ねえ、誰だそんなアホ」 「アイツです、ルーキーのメガネ」 「サンライズか」  アイツとは組まなくてよかった、最初からそう思っていたヤツの一人だった。  研修ではいつも落ちこぼれ、その後もあまりぱっとせずにいたクセに、入局三年目でいきなりリーダー、最初にやった大きなシゴトは、成功はしたもののメンバーの一人に逃げられたと聞いている。 「どの辺を歩いているかは判ってるんだな、ソイツ」 「はい、しかも足をくじいたとか」 「オレがちょっと回り道して、首をひねってきてやろうか」  血の気の多いエレメントが早速買って出た。 「誰か付けるか?」 「一人で十分だろう」  立ちションに行くくらいの気軽さで、彼はいったん来た道を引き返していった。 「P‐0094の合流地点で待っててくれ、17時着予定」 「ムチャクチャ動きよんな、アイツ」  レイジーボーンズが感心したようにつぶやいた。  似たような会話が02班でもあった。  しかし、ここでは 「ワナかも」  と声が上がった。ゾディアックからだった。 「サンライズ……案外手ごわいと思う」  金髪をクルーカットにしたノルトゼーが、ぎろりと彼を睨む。 「臆病者」  目がそう言っていた。ゾディアックは下を向いた。  それでも、普段は案外寡黙な彼がそう言ったので、リーダーのジャッカルも腕を組んでしばし考えた。 「さっさとやっつけちまおうぜ」  ノルトゼーはやる気満々だ。 「ノルトゼー、オマエ見て来い。チャプマン、念のために付け」  ノルトゼーは再度ゾディアックに強い目線を送ってから、チャプマンに合図して自分の装備を担ぎ直し、薮に消えた。チャプマンも迷わず後に続く。  ゾディアックは静かにため息をつく。  レイジーボーンズが、噛んでいたガムを吐いたついでに、つい声に出す。 「ヤツらがいない方が」 「もしかしたらいい所まで行けるかも知れない、確かにな」  感情を込めない声音でそう続けたのは、ジャッカルだった。  勝負は、謀った通りに事が運んだ。  まず、ノルトゼーがヘルメットの頭を発見。こっそりと忍び寄った。チャプマンが背後を警戒しながら少し距離を空けて後に続く。  目標まで10メートル、ノルトゼーがヘルメットの下、大きなリュックに隠れた身体のあたりに照準を下げる。警告なしで撃つつもりらしい。そして、いきなり引き金をひく。  反応の無さにはっと気づき、駆け寄ってリュックを蹴りあげた。 「嵌められた」目の端に、03班のエレメントの姿が飛び込んだ。チャプマンに照準を合わせている。 「チャプマン」ふり向きざまにそう叫んでエレメントを撃つ。が、外れた。エレメントはチャプマンを撃ちながら岩陰に飛び込んだ。彼らもあわてて草陰に伏せる。 「畜生」チャプマンが歯を食いしばっている。 「やられた、左が痺れてる。タグ見てくれ」見ると、タグはオレンジ、重傷だった。 「アイツを殺っちまってくれ」 「わかった」  そっと頭をのばす。すぐに、銃声が響いた。  しっかりとかがみこんで、再度チャプマンの顔色をみる。光線銃とはいえ、撃たれるとそれなりのショックはある。コイツ、気を失ってないか? みると、本当に気を失っていた。 「おい」声を潜めて揺さぶってみる。「だいじょうぶか? 起きろよ」  彼のタグがいつの間にか赤に変わっていた。 「どうしたんだ? それほどひどかったのか?」  気が付くと、額に銃口が当たっていた。おそるおそる目を上げた。  04班のギガンテだった。 「わりいな」  反撃する間もなく、彼は撃たれて気を失った。
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