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03班『野蛮人』リーダーのアルファ、通信係のクィンテットが偶然他班の通話を拾ったと聞いて、始めは眉をひそめた。
「一人置いて行かれた、って?」
「らしいです」
「何で分かった」
「ソイツが間違えてこちらの周波数を使って……最初だけでしたが」
「あり得ねえ、誰だそんなアホ」
「アイツです、ルーキーのメガネ」
「サンライズか」
アイツとは組まなくてよかった、最初からそう思っていたヤツの一人だった。
研修ではいつも落ちこぼれ、その後もあまりぱっとせずにいたクセに、入局三年目でいきなりリーダー、最初にやった大きなシゴトは、成功はしたもののメンバーの一人に逃げられたと聞いている。
「どの辺を歩いているかは判ってるんだな、ソイツ」
「はい、しかも足をくじいたとか」
「オレがちょっと回り道して、首をひねってきてやろうか」
血の気の多いエレメントが早速買って出た。
「誰か付けるか?」
「一人で十分だろう」
立ちションに行くくらいの気軽さで、彼はいったん来た道を引き返していった。
「P‐0094の合流地点で待っててくれ、17時着予定」
「ムチャクチャ動きよんな、アイツ」
レイジーボーンズが感心したようにつぶやいた。
似たような会話が02班でもあった。
しかし、ここでは
「ワナかも」
と声が上がった。ゾディアックからだった。
「サンライズ……案外手ごわいと思う」
金髪をクルーカットにしたノルトゼーが、ぎろりと彼を睨む。
「臆病者」
目がそう言っていた。ゾディアックは下を向いた。
それでも、普段は案外寡黙な彼がそう言ったので、リーダーのジャッカルも腕を組んでしばし考えた。
「さっさとやっつけちまおうぜ」
ノルトゼーはやる気満々だ。
「ノルトゼー、オマエ見て来い。チャプマン、念のために付け」
ノルトゼーは再度ゾディアックに強い目線を送ってから、チャプマンに合図して自分の装備を担ぎ直し、薮に消えた。チャプマンも迷わず後に続く。
ゾディアックは静かにため息をつく。
レイジーボーンズが、噛んでいたガムを吐いたついでに、つい声に出す。
「ヤツらがいない方が」
「もしかしたらいい所まで行けるかも知れない、確かにな」
感情を込めない声音でそう続けたのは、ジャッカルだった。
勝負は、謀った通りに事が運んだ。
まず、ノルトゼーがヘルメットの頭を発見。こっそりと忍び寄った。チャプマンが背後を警戒しながら少し距離を空けて後に続く。
目標まで10メートル、ノルトゼーがヘルメットの下、大きなリュックに隠れた身体のあたりに照準を下げる。警告なしで撃つつもりらしい。そして、いきなり引き金をひく。
反応の無さにはっと気づき、駆け寄ってリュックを蹴りあげた。
「嵌められた」目の端に、03班のエレメントの姿が飛び込んだ。チャプマンに照準を合わせている。
「チャプマン」ふり向きざまにそう叫んでエレメントを撃つ。が、外れた。エレメントはチャプマンを撃ちながら岩陰に飛び込んだ。彼らもあわてて草陰に伏せる。
「畜生」チャプマンが歯を食いしばっている。
「やられた、左が痺れてる。タグ見てくれ」見ると、タグはオレンジ、重傷だった。
「アイツを殺っちまってくれ」
「わかった」
そっと頭をのばす。すぐに、銃声が響いた。
しっかりとかがみこんで、再度チャプマンの顔色をみる。光線銃とはいえ、撃たれるとそれなりのショックはある。コイツ、気を失ってないか? みると、本当に気を失っていた。
「おい」声を潜めて揺さぶってみる。「だいじょうぶか? 起きろよ」
彼のタグがいつの間にか赤に変わっていた。
「どうしたんだ? それほどひどかったのか?」
気が付くと、額に銃口が当たっていた。おそるおそる目を上げた。
04班のギガンテだった。
「わりいな」
反撃する間もなく、彼は撃たれて気を失った。
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