1 こんな研修見たことねえ

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 初耳だった。 「リーダー研修、ですか」  特務課長の乃木がファイルを渡しながら、深くうなずいた。 「詳細説明があるから、必ずここの日時を空けておくようにね」  サンライズは呆然とした目を、手元の資料に向ける。  今週金曜十八時より。  東日本支部技術部特務課所属全リーダーに対しての説明会、とあった。   「サンちゃんとこにも、来たんだ?」  ノギが行ってしまってから、隣の島から、ローズマリー・リーダーがヒマそうに寄ってきた。  一体この人はいつオシゴトをしているのだろう? つい首を傾げたまま、サンライズは近づいてくる彼をみる。  このローズマリーという男、自分よりリーダーとしても先輩なのに、見かけるたびにフラフラしているイメージがある。  見た目は若くかなりいい男ではある、そこまではいい。  格好が会社員にしては少し派手ではあった。髪を長くしてしかも前髪を一部脱色しているし、やや光沢のあるスーツが妙に細身の身体にフィットしているし、怪しさは限りない。MIROC《マイロック》の人かどうかも実は疑わしい、と思う事まであった。  それでも今は頼りがいのある先輩として「何でも訊いてごらん」的な笑みを浮かべている。 「あれ? もしかしてローズ先輩の所にもいきましたか?」 「あったぼうよ、てやんでえべらぼうめ」  まあ、時々どこの出身の人かも分からなくなる。 「これ、支部のリーダー全部出るんですかセンパイ?」  やだなあ、と新米に果てしなく近いリーダーのサンライズはまるで爆発物に触れるようにページをめくっていった。 「去年、こんなのなかったよねえ……」 「二年にいっぺんくらいかな?」いや、三年ごとかなあ、とローズマリー。 「だいたい二泊くらいかな? 無事に帰って来られれば」 「今まで無事に帰れなかった人っているの?」 「え?」  急に、ローズマリー先輩は、得意の何も考えてない笑顔になった。 「いたかなあ? いないかなあ? ゾーさんは前回遭難しかかったけど」 「そんなに危険なの?」  同じく飲み連れであるゾディアック・リーダーは、普段は大型草食獣のようにおっとりしているが、彼らよりずっとガタイもいいし、いざという時の身のこなしも闘い向きだという感じがする。  その彼が遭難しかかった?   ますますヤバい。  遭難なんてゴメンだとぷるぷる首を振り、サンライズは中を熟読し始めた。  現在、東日本支部技術部特務課の主任、つまりリーダー登録者は全部で二十四人。  その中の、任務中でどうしても参加できない数名を除き、ほぼ全員が一同に会し、数班に分かれて、『サバイバル合宿』を行うのだという。 「でもヘンだよな」  急にローズマリーがそう言ったので、何で? と聞いたら 「普通さ、リーダー三年目からが合宿の対象なんだけどなあ……」  そうつぶやいている。  リーダー二年目になったばかりのサンライズ、 「ナンデスト?」  と立ち上がり、あわててノギの所に向かった。 「どうした?」  ノギが意外そうに目を上げたので、彼はローズマリーに聞いたことを伝える。  すると 「まあ……一応そうなってるがね」  こちらも、何を考えているのかよく分からない笑顔でこう応えた。 「支部長判断で、今回は全員参加だって。文句があるなら支部長に言って」  サンライズはうなだれて、自分の席に戻った。
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