2 あんな会議は怖すぎる

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 全体説明は三十分ほどで終了した。  その後、ノギが正面ホワイトボードにA3の紙を貼り出した。  リーダーたちは筆記用具をまとめてぞろぞろとその前に集まり始める。 「01班は、会議室711、02班は712……」  チーム分けらしい。  サンライズが寄ってみると、04班、しかも他の班は5人ずつなのにこの班だけは6人の面子、その一番お終いに自分の名前があった。  なんかやっぱり余分なはみだし者だなあ、オレってば。このまま帰りたい。 「サンちゃん」  ローズマリーがすれ違いざまに声をかける。 「おれ01だから……じゃあまたね~」  声は明るいが、こちらから何か応える前にすでに姿を消していた。  ゾディアックは、とみると下を向いたまま会議室を出て行くところだった。  名簿を見ると、彼は02班だった。  やっぱり敵同士になってしまった。  足取りは重かったが、一応オトナなのでサンライズも次の打合せ場所に向かった。  714号会議室には、すでに他の五人が丸くなって座っていた。  すみません、と一番ドアに近い空いている席に座る。  サンライズが座ったのを確認すると、 「ええと、では一応自己紹介を」  正面の白髪が口をきった。  短髪はすべて白いが、それほどトシをとっているという風でもない。どう見ても四十代半ばだ。 「ホーク、です。よろしく」  この人がこのチームのリーダーなのかとサンライズはばくぜんと思ったが、話を聞いているうちに、ただ、最初の司会進行を任されていたらしいと気づく。 「リーダーになって、今年で12年目に入りました」  口調はとても穏やかで優しげな感じだった。  しかし……第一印象に騙されるな。 「国籍はChina。福建省出身です。あとは添付の履歴を見てください、合宿は3度目ですね」  手元に渡された資料の中に、一応、メンバーの簡単な履歴がついている。 「じゃあ、こちらから順に」  ホークが右手を上げると、手の先にいた男がびくりと肩を震わせてから口を切った。 「ヤルタです」  先ほど、サンライズの隣にいた眼鏡の小男だった。  神経質そうな固い口調だった。 「リーダー歴は6年半、主に企業間交渉の仲介をやってます、合宿は初めてです」  やはり緊張しているのは、オレだけじゃあないんだ。  何となく親近感がもてる。 「メントス」  ぶっきらぼうな感じの大柄な男が立ちあがる。 「リーダーは7年、いや8年やってる。アジア各国の拠点を回ってた。合宿は2回目」 次の男もコワモテだった。 「ギガンテ。本部、西日本、北日本支部……国内はだいたいどこも回った。リーダーになって11年。たまたま帰ってきたら合宿だと、運が悪い」  何人かが低く笑った。  次がサンライズの番だった。 「サンライズです」やはりみんなの視線が痛い。 「あの……」  いったん手元に目を落とし、それから意を決して皆の顔を一人ずつみる。 「去年の4月からリーダーになりました、1年ちょっとです、よろしくお願いします」  なんとか声が震えずに云えたような気がする。  落ち着いているふりをして、ゆっくりと腰かけた。  最後に、ホークの隣、少し椅子を離すように座っていた男がゆらりと立ちあがった。  最初の打合せで、後から入ってきた男だった。相変わらず落ち着いている。 「ベイカーです」  声もよく通り、堂々としている。 「本部の特務で6年リーダーをやった後、他の部署に回ってから、またこちらの支部でリーダーをやっています。こちらでは2年目だな」  サンライズの方をちらりと見る。同じだな、と言いたいのか、でもオマエよりずっと先輩だからな、ということなのかも?  合宿までの事務手続きと各自の任務をどこまでまとめておくか、詳細についての話に入った。  現在抱えている任務が特になかったサンライズ、半分ぼんやりとファイルをめくりながら、ふと思いつく。 ―― スキャニングを試してみようか、ここで。
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