オリーブを知るさつき

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 矢継ぎ早に喋る彼女は、讃岐弁の混じった強く聞こえる口調だった。口調と自分の家のように振る舞いに、パセリは圧倒されながらも、来客用カップを取りに走った。  パセリがカップを持ってくると、三歩手前のところで、ハキハキした明瞭な声で礼を言う。  素早くパセリからカップを受け取り、ドボドボと音をたててハーブティーを注ぐ。  それを一気にあおって飲むと、プハァと息をついた。  三人娘達は、豪快さにおっかなびっくりな様子で、その一連の流れを見守った。オリーブは、嫌なものを見るような目で、終始彼女を見ている。 「相変わらずなのは、さつきの方でしょう。スミレのように、可憐に慎ましく、そして時に逞しく生きるのがイイ女なのよ」 「あら、現役ナースの逞しさを甘く見んといて。九連勤務、徹夜明けで夕飯の買い出しに行って、餃子の準備して、ここに来たんよ。タフさなら、負けてないで」  そういうことじゃない。オリーブは、口を尖らせふて腐る。 「あのー、看護師さんがどうして、ここに来たんですか?」 三人からすれば、あまりに話が進まない。堪らずバジルが口を挟む。彼女は、歯が見えるように笑いながら自己紹介をし始めた。 「私、マツの同級生国分さつき。心は、いつでも十九歳。職業、白衣の天使でーす。今日は、カモミールの植え替え相談に来ましたぁ」  さつきは言い終わると、目元でピースサインを作って戯けている。  三人とも、どう反応していいのか分からず、曖昧に笑うだけだ。オリーブは、ミントのように冷たい息をつき、視線も猫のように鋭い。  そんな気まずい空気の中、カモミールは口を開いた。 「あのぉ、ところでマツって誰のことですか?」
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