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肉屋のおじさんが少年に目を止めたのは、
彼がそこに座ってからどれぐらい後だったでしょうか。
「うちの金庫の鍵が壊れて困ってるんだ、もうずっと開かない、開けてくれないか。お礼はするよ」
と手に持っていた金貨を1枚少年に見せました。
少年はチラッとだけ、それを見て。
「そんなもんはいらないし、そんなもんは開けない」
とニヤリと笑いました。
「おじさんは、ぼくに仕事を与えて、お金を与えて善い行いをした、と思いたかったんでしょう?
それでもって、金庫の鍵が開いたら中からお金がザクザクだから、いっせきにちょうってやつでしょう?」
したり顔でむずかしい言葉を知っている少年がズバリとおじさんの心の中を言い当てたので、
おじさんの心臓はドキリと大きな音をたてました。
自分の心が恥ずかしくなってしまったのです。
町の人たち、みんなが自分のことを笑ってるような気がして慌てて肉屋に戻っていくおじさんに。
少年は、バイバイと楽しそうに手を振りました。
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