きゅうりのチャームとなすのスキン

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きゅうりのチャームとなすのスキン

 e2d94c18-528e-403c-ab05-c12a54b0fcff 川の底は橋の上から見ただけではわからない複雑な形がある。  足の甲が見えるほど透き通っている場所は浅くて動きやすい。シュウがふざけながら撃った水鉄砲の水を僕は軽々と避ける。  けれど、濃い青に緑が混ざったような場所はとても深く、僕たち小学生の身長では底に足が届かない。そこにはまると、泳ぎに集中しないといけない。だから、シュウに狙い撃ちされる。  シュウを深い方へ追い込むようにしながら、僕は慎重に距離を詰めていく。 「くそ! ナツキ卑怯だぞ!」 「立ち回りだよ。頭を使って戦わないお前が悪いんだ」  往生際の悪いシュウはやけくそになって水鉄砲を乱射する。すぐに水がなくなり、ポンプを外してリロードしている間に、さらに追い討ちをかける。  目の前の撃ち合いに集中していたから、頭上の敵に気が付かなかった。 「水爆弾くらえ!」  何もしなくても破れそうなほど膨らんだ水風船が、橋の上から降ってきた。  上を向いた時、ちょうどその水風船が目の前に迫っていて、本当に爆弾のように顔で炸裂した。 「うわぁ! ハルカも卑怯だ! お前らみんな卑怯だ」  シュウが叫んでいるのを聞きながら、ハルカが橋から身を乗り出しているのを見て嫌な予感がした。 「必殺! ハルカボンバー!」  僕たちがいる深い場所を目掛けて、ハルカは飛び降りた。ハルカの小さな体でも、橋の高さのおかげで、大きな水しぶきが上がった。  その時に浮かんだ虹色に意識を奪われて、水しぶきを避けることを忘れた。 「やったぁ! 二人とも私がやっつけた!」  ハルカは笑い声をあげながら、手足を忙しくバタバタさせている。楽しそうだが、もがき苦しんでいるようにも見える。  そうだ。ハルカは泳げないんだった。 「助けて、ナツキ!」  僕は水鉄砲を手放して、バタバタしているハルカに泳いでいった。  ハルカが飛び込んだことによって生まれた波が、僕の顔に押し寄せて呼吸を奪う。ハルカがもがけばもがくほど、水が迫ってくる。  呼吸ができない。焦燥が死を想起させる。  助けを求めるハルカの手に捕まったら、僕も引きずりこまれるのではないか?  水底は存在せず、僕とハルカを飲み込むように口を開けて待っている。そんなイメージが頭をよぎる。 「今助けるから、待ってて!」  僕は頭を低くして潜り、ハルカを抱えるようにした。強張った身体から力が抜けていき、僕らはしばらく言葉なく浮かんでいた。  脳裏に焼き付いた恐怖を水に溶かすには、こうして待つことしかできなかった。
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