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「ねえ、咲。あたし、間嶋くんのこと、好きになっちゃったかも」
親友の突然のカミングアウトに、口に含んでいたオレンジジュースを噴き出すかと思った。
「ええと……間嶋って、あの間嶋であってるよね?」
「うん。咲と同じクラスで、軽音部の間嶋くん」
やっぱり、あの間嶋 陸のことで間違いないらしい。それにしても、どうして美月がアイツなんかのことを?
「へぇ、そうなんだ。でも、なんか意外かも」
「そう?」
「だって、アイツのどこが良いの?」
無愛想だし、ドラムにしか興味なさそうだし、何を考えてるのかいまいちよく分かんないし。バンドを結成してからもう三か月近くの付き合いになるけど、私は未だに距離感を掴めていない。
「クールな感じで、格好良いじゃん。それなのに、ドラムを叩いてる時は本当に楽しそうに笑うの。なんかドキッとしちゃった」
「ってことは、私のことは全然目に入ってなかったってこと!? 一生懸命ベース弾いてたのに!」
「あー、咲の勇姿も見届けてたよ。ついでに」
「ついで!? ひどいー!」
美月はけらけらと笑って、明るく染めた茶色い髪をしばらく指で弄んだ後、私を真正面から見据えてきた。
「それでね、咲。もし、良かったらなんだけど……間嶋くんのこと、協力してくれないかな」
「もちろん。良いに決まってるよ」
「ほんと!? 嬉しい! ありがとう!」
その瞳がサンタさんからクリスマスプレゼントをもらった子供みたいに輝いた時、心臓がどきりと飛び跳ねた。
そっか。真剣に恋をしている女の子って、こういう顔をするんだ。
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