さようなら

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さようなら

   ベルン皇太子殿下に頼まれたのは、皇家敷地内の一番高い塔のてっぺんに幽閉されている第2王子のもとを訪れること。  曲がりなりにも皇家の敷地にあるものであるため、見た目は童話のお姫様が閉じ込められていてもおかしくないほど美しい白塔だ。けれども、実情はこの美しい外観にそぐわないもので、この塔が以前に使用されたのは数百年の歴史を持つ皇家の歴史で数えるほど。  皇族の大罪人が幽閉されるためだけに作られており、どのような魔法を使っても逃げられないようになっているのだとか。故に塔周辺には物騒な魔法に囲まれている。この中に足を踏み入れるだけで、果たして自分は安全にこの場を出ることが出来るのだろうかと不安がよぎる。  ーーしかも、この世界はエレベーターやエスカレーターなんて物はなく、一歩ずつ螺旋階段を上がっていくしかない。  魔道具でも使って、サクッとてっぺんまで登らせてくれれば良いのに、ここでは魔法の一切の使用を禁止されており、この面談は極秘の非公式なもの。  何故そうまでして、私があの第2王子に会わなければならないのかと思ったけれど、皇太子に脅された(頼まれた)以上は来ない訳に行かなかった。  長い階段を登り切った私に、案内人が体力回復のポーションをくれた。お礼を言ってポーションを受け取り、飲み干した私は、深呼吸をして戸板をコンコンと叩いた。    中からの返事は無く、がんじがらめにされた施錠がパっと消えてしまったので、それを入室許可だと思った私は、恐る恐る扉を開けた。  鬱蒼としていて、暗がりの室内。扉を開けてやっと光が差し込んだのだろう。  そっと、足を踏み入れてみると扉がバタンとしまり、同時に室内の蠟燭が数本灯った。 ーーうそっ。私一人で会うの!? 無理、むりむり!!!!それは無理だから!!  ライザは動揺しながら、部屋の出ようと扉へ駆け寄り、ドアノブに手をかけた。すると、焦るライザの背後から、声をかけて来る者が居た。 「やぁ。 おねぇさん、来てくれて嬉しいよ」    
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