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菜々子の言葉に、少年は目を丸くする。その反応を見た菜々子は、あきれ気味に言った。
「あなたオバケなんだから、普通に話をされても分からないわよ。人間に合わせて喋りなさいよね」
少年はあごに手を当て、しばらく何か考えていたが、突然嬉しそうに言った。
「お名前は何とおっしゃるのですか?」
「はぁ?!」
菜々子は驚いて声を上げたあと、溜息をついた。
(こいつ、全然分かってない)
「あのね」
菜々子は言う。
「私、オバケと世間話をする気はないんだけど」
「東京はいい所ですか?」
「聞いてないし!」
少年はのんびりと、にこにこして聞いてくる。
(どうしよう。何て言えば伝わるかしら)
菜々子は考えるが、何を言ってもうまく伝わる気がしない。
そうこうしているうちに、また少年が聞いてくる。
「東京は何が美味しいですか?」
「だから!」
菜々子は困りながら叫んだ。
(どう言っても、引き下がりそうにないわね)
半眼で少年を見ると、気付いた少年はにこっと微笑み返してくる。
「まったく」
その様子があまりにも嬉しそうなので、菜々子はつい、質問に答えてしまった。
「あんパンが美味しいわ」
「あんパン?」
少年が微笑んだまま首をかしげる。
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