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ああ、まただ。
また、わたしはこやつに翻弄されている。
いまいましいったらない。
いまいましくてたまらないのに。
締め付けられた胸が、きゅんと場違いな音を立てるからわたしは愚かだ。
〖……一緒に、いたいです。〗
【でしょうね。】
〖すごい自信ですね。〗
【ありがとう!】
〖はい、どういたしまして。〗
たぶん他人が見たらあんまり噛み合ってないこの会話、つまり最後の2文を訳すとこうである。
【だって俺のことすきなんだろ?】
〖はい、おっしゃる通りです……〗
ええ、ええ、その通りですよ。
どれだけ無愛想で訳がわからなくて振り回されっぱなしでも、わたしはそんなキミから離れられないんですよ。
そんな自分が、嫌いじゃないんですよ。
【うん、どういたしまして。】
〖…………?〗
【こちらこそ、どういたしまして。】
ほらね。
こういうの、ズルい。
〖ねぇ、ほんとにちょっとくらいは、わたしのことすき?〗
【なんでだよ、すきすきだいすきだよ!】
〖…………〗
軽く馬鹿、なんだけどね。
【今、コイツ馬鹿だなとか思っただろ?】
〖滅相もございません。〗
【おまえのせいだよ。】
〖いや、濡れ衣過ぎです。〗
【馬鹿になるくらい、おまえのことすきってことだよ。わかれよ、馬鹿。】
ね。こういう人。
ツンツンツンデレツンくらいの割合なのに、むしろそのせいで、たまのデレの破壊力が……!
〖ちょっと、フェータル食らったです。〗
【なににやけてんだよ。】
〖見えてるみたいに言わないでよ。〗
【見えてなくてもわかるだろ。どんだけだよ。】
〖どんだけってくらい、すきです。〗
ありがとう!を予期していたのに。
【一生言っとけ。】
やっぱりキミから、離れられない。
END
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