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プロローグ
俺は今、余生を全うするために、愛する者とかけがえのない時間を過ごしている。陽炎が立ち込めるアスファルト。
蝉の大合唱が鳴り響き、子供たちの元気な叫び声が朝から響き渡る7月のある日。世間は楽しい夏休みにはしゃいでいたが俺はそんな気持ちとは程遠い
俺は最近弟と妹が車に轢かれ目の前で死んでしまう光景を見てしまい、ショックのあまり引きこもり生活を送っていた。先日、夢の中で神様と名乗るものから俺の余命というものを告げてきた。
皆がイメージするような白髪の長いひげと髪を伸ばした老人は俺にこう告げた。
「時間を無駄にするんじゃない。残念じゃが君の命は一か月だよ。だから悔いのない夏を過ごしなさい」
「はあ? 何を言っているんだよこの爺さんは? 」
不幸のどん底にいる俺に唐突に突き付けられた余命宣言に納得できなかった。だって身体もピンピンしているんだ。
だがその爺さんは交通事故で最近、死んでしまった弟や妹のことなどを言い当てると、今まで怒りの表情が見る見るうちに不安へと変わっていってしまった。
「いいか? 死んでいった家族のためにも誰かのために必死に生きなさい。そうすればいつか報われるぞ」
そう言い残してその爺さんは消えてしまい、俺は目覚めの悪い朝を迎えた。とりあえず自分の体を隅々触るが何もなかったことに安堵する。
だが夢とは言っても突然の余命宣告には動揺を隠せず、食事ものどが通らないくらいに何もする気がしなかった。
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