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「やっぱり寂しいの? 」
「あ、ああ…… 来年もこの光景を見ることができないと思うと妙な喪失感に包まれたよ。このまま君との来年の夏を過ごしたいと思うと折角こうして過ごした夏の思い出がなくなることが悲しくて…… 」
これが見納めだと思うと何故だかこの場を離れたくなくなってしまった。彼女は瞬時に空気を読んで俺の隣に寄り添ってくれた。
「そんなことないわ。きっとこうして私たちだけにわざわざお告げをしてくれたことはもしかしたらいい切っ掛けだったのかも知れないよ」
「ありがとう…… 」
「だから前向きに夏を楽しみましょう」
俺は彼女の言葉と笑顔に救われた。彼女の言うとおりだ。あのままお告げがなければ、事故で死んだ弟たちを悔やんで、引きこもって人生を終えてしまっていた。この夜は宙を舞って踊る蛍の舞踏会を堪能しながら俺たちは眠りについた。
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