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第4話 私の恋
ドラッグストアで、電動の産毛ソリ、ヘアーアイロン、フローラルの香りのボデイソープ、色付きリップ、ピンクのチークを買いプレゼントした。
ぽちゃ子はドラッグストアを出ると、「持つべきものは太っ腹の姉だな!」と紙袋を2回ブンブンと振り回して笑った。
私が、「じゃあね。これから遥のところ行くから」と声を掛けると、急に真摯な雰囲気をまとったぽちゃ子は、「お姉ちゃん。ありがとう。アタシ綺麗になる努力をしてみる。いつか可愛いねって言ってもらえるように!」と言ってお辞儀をした。
大きく頷いて、頑張れとエールを送ってから、遥のマンションへと急いだ。いつもと違って気持ちが軽かった。誰かに感謝される喜び。それが私には足りなかったんだろう。仕事の人間からも。恋人からも。
*
遥が忙しくなってから、週末は家事をしてあげたいと思った。最初のうちは「本当に助かる。ありがとう」と言っていたけれど。そのうちに、何も言わなくなった。
毎回、洗濯物を回し、部屋中をざっと片付けてから、掃除機をかけ、彼の夕食を準備に取り掛かろうとするときに、一緒に夕食を食べずに帰る自分ーー1時間後の自分を思って惨めに思うようになった。
「疲れてるから、ごめん。寝てたいんだ」
そんなセリフを遥に言わせてしまうほどの仕事量を与える会社は、罪深いと思う。週末、遥は寝てるかパソコンで仕事をしているかだ。
◇
遥のマンションで、買ってきた食材を切りながら、「結婚なんて、壮大なボランティアじゃね!」という妹の言葉が頭から離れなかった。ボランティアって本来なら愛からくる行動なのに、なんだか否定的に聞こえる。
夕食を作り終え、「ここにあるからね。食べたら、また寝て。また明日から忙しいもんね」と決まったようなセリフを言うと、彼は「悪い」と言って立ち上がった。
玄関まで見送ってくれる遥は無表情で、「また連絡するわ」と決まりきったセリフを言う。連絡なんてこないことも知っているけど、それでも私は「うん。でも無理しないで。じゃあね」と笑顔を作って返事をする。玄関のドアを開け、閉めた途端、この頃は泣きそうになる。毎回、「ハグくらい、してくれてもいいのに」って思う。
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