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専門学校時代からずっと二人で高めあい支えあってきたと思っていた。
――私は私のことを認めてくれる、ほかの居場所を見つけたの。
チヒロには自分以外に居場所がある。
そのことがアイにはどうしても許せなかった。
アイはチヒロの部屋、テレビ台に置いてあったトロフィーに目をやる。三年前、アイのデザインしたドレスでコンテストに出場したチヒロが受賞したときのものだ。
アイは腕いっぱい、トロフィーを勢いよく掲げるとチヒロの頭に振りかざした。
長くとつやのあるブラウンの柔らかい髪がふわりと舞う。倒れ込んだチヒロは動かなかった。
アイは指紋を拭き取りその場をあとにした。
彼女は仕事で恨みを買っていたらしく、殺人の動機のありそうな人物はほかにもいたためか、三日たっても警察はアイのもとへはやってこなかった。
そうして自首する勇気もないまま、アイは今こうして遺書を書いている。
ああ、さっき飲んだ薬が効いてきたのか意識が朦朧としてくる。
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