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次に気が付いたとき、そこは知らない部屋だった。
自分の部屋ではない。でもこちらを覗き込んでくる顔には見覚えがある。
小住君だった。チヒロが一年ほど前から付き合い始めた彼氏だ。アイは彼に三回ほど会ったことがあったが小住君は二歳ほど下の、とてもまじめで穏やかな青年。
虫やホラーが苦手でちょっと弱虫だけど心優しい小住君は、強気なチヒロとはバランスがとれていて微笑ましいカップルだった。
そうだ。アイは小住君からもチヒロを奪ったことになるのだ。
「音楽をかけてくれる?」
その言葉の意味をとらえようと思考をめぐらすと目の前の鏡に映った自分の姿を見た。まるで白い猫のぬいぐるみのようだった。小住君はそれに話しかけている。
どうやらアイはAIとして生まれ変わったようだ。
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