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「アナ..!!」
ミッチは読んでいた本を落としそうになった。
アナは彼の隣に座ると、彼に向かって微笑んだ。
「フライトの時間聞いてたから..よかった、間に合って」
「アナ..その子は...」
「サミー・ミッチェル・ウォーレンス、一歳になるの」
サミーはミッチにニコニコと笑顔を見せている。
「貴方の子供よ..」
ミッチは眼鏡を外し、目頭を押さえながら
「直ぐに分かったよ..僕にそっくりだ」
彼は涙を流しながら、笑顔で話した。
「抱かせてくれるかい?」
「ええ、もちろん」
ミッチは優しく我が子を抱き上げた。
サミーはキャッキャと楽しそうに声を上げる。
「コロンビアから帰って暫くしてから妊娠した事に気付いたの..」
ミッチはたくさん聞きたい事があったが、アナはそれなりの覚悟で一人で産んで育てることを決意したのは彼には十分過ぎるほど分かっていた。
「アナ..産んでくれてありがとう」
ミッチは彼女を抱きしめた...
「愛してるわ、ミッチ...」
「僕も愛してる、僕には君しかいないんだ..」
***
サミーはベビーカーでスヤスヤと眠っている。
「そろそろフライトの時間ね..」
「アナ、君の心の準備が出来たらメキシコにサミーと来て欲しい...」
彼女はハッとした表情を浮かべた。
「言葉の壁はあるけど、メキシコは素晴らしい国だ。直ぐに友達も出来るよ」
「ミッチ..」
「結婚しよう、アナ」
彼女の瞳から涙が溢れ、頬を伝った。
アナは笑顔で大きく頷くとミッチにキスをした...
「先に向こうで待ってるからね」
「ええ、..身体に気を付けて」
「ほらサミー、あの飛行機にパパが乗ってるのよ」
ロビーの飛行場が見える窓からアナはサミーを抱きかかえながら飛行機を指差した。
サミーは飛行機にバイバイするように小さな手を振った。
アナは暫く飛行機が飛び立った後の澄んだ青空をサミーと一緒に眺めていた___
❦ℯꫛᎴ❧
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