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「どうしてお前はそんなに自分ばかり抱え込もうとするんだよ」
アレックスは少し苛立ったような表情を浮かべる。
「..別にそんな事」
「アナだって教授だってお互いに一緒にいたい相手はもう分かってるだろ。綺麗事いくつも並べてないでジャングルにいた時みたいに本能のまま突き進めよ」
「アレックス...」
「サミーには父親が必要だ」
アレックスは一転、今度は優しく微笑んだ。
「..アレックス、私...」
アナは口を押さえ、涙を流した...
アレックスは彼女の隣に座ると、包み込むように優しく抱きしめた。
「もういいんだ、..教授はアナのことを待ってる。サミーのことも...」
***
その日の夜。
窓から入る風が心地よく、その風は夏の終わりを知らせるようなそんな風だった。
たまに考える時がある...二年前のコロンビアのジャングルでの生活を。
全ての歯車が合い、サミーは誕生したのだ。
あのジャングルで自分は命を落としていたかもしれない...そう考えただけでサミーが今、此処にいるのは奇跡なのだ。
アナはベビーベッドで眠っているサミーの頬を優しく撫でると、額にキスをした。
「サミー、愛してる」
ーーー
ミッチがメキシコへと発つ日...
ミッチ・スティーヴンズはメキシコ行きの便をロビーで待っていた。
まだフライトまで時間があったので彼はラウンジへと向かった...
カウンター席に座り辺りを見渡したが、彼女は見当たらない。
「あの、..此処で働いているアナ・ウォーレンスさんは今日は」
ミッチはカウンターにいた女性店員に聞いた。
「ウォーレンスは今日は休みです」
「..そうですか。あっ、コーヒーを...」
彼は自分でも可笑しかった。
アナとはあれで本当に終わったのだ。
それなのに彼女を探している自分がいる...
ラウンジを後にし、再びロビーへと戻り椅子に座り本を読んでいた。
「ミッチ..」
その声は幻聴かとも思えるほど、頭の中で優しく響いた...
ミッチが顔を上げると、そこにはアナ・ウォーレンスが小さな子供を抱いて立っていた。
それがまるで彼には聖母マリアに見えたのだ___
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