悪夢の夏

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 降り注ぐ日差し。白い入道雲。そして響き渡る蝉の声。  アスファルトから陽炎が立ち上る様な暑い日だった。  頼恵はスーパーからの帰り道を歩いていた。  イライラするのは暑いからだけではない。  いや、むしろ頼恵は暑さを嫌ってはいなかった。  夏なんだから暑いのは当然だ。  それよりイライラするのは家が寒い事だ。  夫が極度の暑がりで、家の冷房をガンガンにかけるのだ。  しかも彼が家にいる間は、リモコンを握って離さない。  最近はテレワークとやらで夫が家にいる時間が増え、頼恵にとっては憂鬱な時間が増えた。  冷房が弱まらない以上、頼恵も厚着して耐えるしかなかった。  外出するときにはそれを脱ぐのだ。  何ともあべこべで面倒くさい。地味な事だが、頼恵をより一層うんざりとさせた。  何度か寒い事を訴えたこともある。だが、夫は暑いと言って断固譲ろうとはしなかった。 「ああ、自分の家なのにどうして帰宅するのに憂鬱にならなきゃなんないのかしら」  頼恵は重たいマイバッグを下げたまま、深いため息を一つ吐いた。
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