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頼恵と別れて後も青年はまだ地面を見回しながらうろうろとしていた。
「やっばいなぁ。勝手に持ち出しただけでも怒られるのに、無くしたなんて言えないわぁ……」
青年はちょっと泣きそうな顔をしていた。
不思議な事にこの青年、この暑さの中で汗の一滴もかいてはいなかった。
「空からの方が早いかなぁ……」
そう言いながら青年はポケットから小さな輪っかを取り出した。
それを自分の頭上に持って行くと、その途端に輪っかは大きくなり、それと同時に青年の姿も背中から翼を生やした半裸の姿になる。翼をはばたかせると、彼の足は地面を易々と離れ、そのまま上昇していった。彼は所謂ところの天使であった。その天使のところへ、別の天使が慌てたように近づいてきた。
「あ、やっと見つけた。おい、お前何やったんだ? 神様がガチギレしてるぞ?」
「うわ……やべ……」
「すぐ戻って来いって」
「いやでも……あー、くそ。しくったなぁ」
天使はため息を一つ吐き、更に上昇を開始した。
彼の所へ知らせを持ってきた天使も同じように上昇を開始する。
「お前、何持ちだしたの?」
「地球の気温を調整するリモコン」
「……ヤバい事するなぁ」
「だってさぁ、神様ってえばり散らしててムカつくじゃん? 俺らに雑用ばっかりやらせてさ。困らしてやろうかと……」
「俺達は天使なんだから当たり前だろ。腹いせで地球に悪戯すんなよ」
同僚に叱られたのが気に食わないのか、青年だった天使は唇を尖らせて不満気に返事をした。
「まだして無いもん……」
「なら良かったけど」
「良くも……無いんだ」
「どゆこと?」
眉をひそめたもう一人の天使に、青年だった天使は苦笑いをして見せた。
二人の天使はぐんぐんと上昇していき、やがてその姿は消え去った。
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