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トンネル
某県の山奥にあるトンネルの話をしよう。このトンネルは有名な心霊スポットである。
このように心霊スポットと呼ばれる場所は全国に塵芥のように存在する。
これは、たまたま心霊スポットの近くを訪れて極めて下らないイタズラをしたことで起きてしまった話である。
十年ほど前の夏休み、とある大学生四人組が山奥でのキャンプを終えた帰り道のこと、車の運転を担当していたAくんが言い出した。
「そう言えば、この辺らしいぜ? あのトンネル」
いきなり「あのトンネル」と言われても何のことだかわからない。他の三人、Bさん、Cくん、Dくんが首を傾げた。
「出るって有名なトンネルだよ。肝試しに行った奴らが何人も消えてるらしいぜ?」
Aくんは右手でハンドルをくいくいと動かしながらカーナビにトンネルの名前を入力した。
他の三人はその名前を見た瞬間に「ああ、あそこのことか」と、納得したような顔をする。
「へー、あのトンネル近くにあるんだ」
「あの有名な」
「こんなド田舎にあったのか。マジで山奥じゃねぇか」
Aくんは他の三人に提案した。
「こんなド田舎、二度と来ることも無さそうだし。ちょっとした度胸試しで行ってみないか?」
Aくんはノリノリである。今まで地元に幾つもある心霊スポットに行き、物見遊山のように行って帰ってを繰り返しているので肝は座っている。これまで幽霊などの心霊現象などに遭遇したことがないために信じてないという方が正しいだろう
「あたしは嫌よ。出るにせよ、出ないにせよ、心霊スポットなんて面白半分で行くものじゃないよ」
Bさんは極めて消極的だった。幽霊などの心霊現象は信じてはいないが、この手のことは恐れる類の臆病者であった。そもそも暗所そのものが怖く、昨日のキャンプでも、男三人がテント宿泊を希望したにも関わらずに「暗いのは嫌」と喚き散らし、無理矢理バンガロー宿泊に切り替えさせたぐらいである。
「よし、行こうぜ。あのトンネルには一度行ってみたいと思ってたんだ」
Cくんもノリノリだった。Cくんはこういったオカルトの類には目がなく、Aくんに同行しての心霊スポット行脚にも参加しているぐらいである。彼はむしろ幽霊に遭遇したいと考えるぐらいのオカルトマニアで、これまで一度も幽霊に遭遇したことがなく退屈を持て余していた。
「僕は別にいいよ」
Dくんは極めてどうでもいいと考えていた。別にいいと言ったのもAくんとCくんに合わせておくかと言った軽いノリでいっただけである。Bさんに好意があるためにトンネル行きを反対しようとも思ったが、男二人に乗せられて「行く」ことに決めてしまった。
他三人の意見を聞いてAくんはトンネルに行くことに決めた。
「3対1、行くことに決定だな」
Bさんは極めて渋い顔をしたが、多数決では仕方ない。渋々ながら従うことにした。これから行く先は県でも有名な心霊スポットであることから全身をガチガチと震わせている。
幽霊も心霊現象もあるわけがないのに…… AくんはBさんを馬鹿にするように嘲笑った。そして、意地悪にもBさんにちょっとしたイタズラをしてやろうと考えたのだった。
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