消えない、消さない

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 一番大切な親友が"好きな人"に変わったのはいつだったのだろうか。不意に手を握られたときだったろうか。小さい頃は友達と手を繋ぐことは普通のことだった。いつしか他人との距離は広くなっていって、触れ合うことができるのは、心を許したごく僅かな人間だけになった。柔らかくて少し湿り気のある手のひらに包まれて、わたしはどぎまぎしながらその手を握り返した。  初めてその姿を見たときから、心を奪われていたのだから、一目惚れだとも言える。だけど、中学生の頃はひとつ上の男の先輩が片想いの相手だったし、まさか自分が女の子を好きになるだなんて、想像したこともなかった。  わたしにとって、千紘は特別だったから。千紘にとってのわたしもそうであると疑わなかった。それはとても自分勝手な考えだ。日を追うごとにわたし以外のクラスメイトとも打ち解けていく千紘に苛立ちや焦りを覚えた。わたしだけが千紘の一番近いところにいたかった。
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