レイニー

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いかにも「何か出そう」って 雰囲気の古臭い 洋館の廊下だった。 知らない顔と知らない影が ぼんやり、隣を歩いてて。 どこかに案内されてるみたいだった。 どうしたらいいのかなって 分かんなくなってると 私のところにも影が来た。 どうしてだろう。 体は大きくてシンプルな 仮面を被ってたのに その様子は「異形」だったのに 私はすごく安心して 彼の跡を追い掛けた。 普段なら極端なくらいビビリだから 絶対そんなこと出来ない。 でもそうするべきだって 信じて進んで行った。 大広間には数人の人が居て 同い年くらいでも誰の顔も 知らなかった。 皆、困惑して動揺してた。 誰一人どうして ここに連れて来られたか 分からないって様子だったよ。 一際大きな真ん丸の影が 仮面だけニンマリ笑ってて 小学校の教室の椅子みたいな ボロボロに朽ちたそれらを 身の回りに囲って 椅子取りゲームみたいに並べてた。 その中央で その巨体には にわかに信じがたいほど軽やかに まるでピエロのように踊ってた。 優しい音楽に合わせて 細い腕を鳥のようにパタパタ 短い足をバレリーナのようにくるくる 滑稽な姿を見て 安堵していた。 彼に危険はないって 疑わなかった。 椅子取りゲームでもするのかと聞いたら 仮面のみ笑う影は 大袈裟に首を横に振り 体にへばりついた椅子に座るよう促す。 何が何やら分からないまま 知らない人同士、顔を見合わせて 渋々椅子に腰掛けた。 影が行ったのは何も 恐ろしいことではなく。 椅子の正面に来た人間に対して 穏やかな 子守唄のように 我が子を抱いた 歌姫のように 美しい声で尋ねるだけ。 『『貴方が好きだった本の名前は?』』
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