5年ぶりの君は。

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「久しぶり」 「おーう」  5年ぶりの画面越しじゃない彼は、少し肉付きがよくなっていた。  とはいえ、それは幸せそうな肉付きで、私の熱さが冷めることはなかった。 「綺麗なったな」  不意にそう言って、頬に何かが触れた。  熱さを帯びたそれが彼の指だと気付くのにそう時間はいらなかった。 「ハハ、だって独り身だもん。いつでも誰かに拾ってもらえるよう綺麗にしとかなきゃ」  笑って返した言葉が震えた。  離れてよ、と願うのに、もっと触ってほしいと手を伸ばしそうになる自分の欲まみれの指先に薄いロングスカートを掴ませた。 「拾う……ねー」  頬に触れた指が、耳にかかった髪をそっと持ち上げる。  耳に、肌が触れた。  熱いのは、きっと、暑さのせい。 「俺が拾おうか? ……なーんつって」 「は……?」  まさかの言葉に間抜けな声を出してしまった。  何を言ってるの?  既婚者が何を言っているの?  その薬指にある証は…… 「……え、ない」  5年前はあった指輪が。  彼の薬指になかった。  
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