5年ぶりの君は。

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 衣擦れの音  荒くなる呼吸音  一度も重ねたことのない体温  一つも何も逃したくなくて、堪えた声を象徴したように、噛んだ指に歯型が付く  チクリ  ――急に痛んだのは、どこだったか  けれどそんな痛みはすぐに消えて、私は気温の暑さに溶けていく。  ずっと求めていた熱い背中に爪を思いっきり立てて、私は10年間秘めていたものを吐き出した。  それが彼の耳に届いていたかはわからない。  一瞬体が強張ったのは知らないふりをした。  そうでないと、この熱さは冷え切ってしまうから。  もっと熱く  お互いを求めて  熱を交換して  また燃えて  そして、そして――  その熱で、私の空しい心を全部溶かして  目尻から落ちるものへと変えてください  
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