始まり

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行平と香織を送り出した明子は、早速家事に取り掛かった。 結婚する前の明子は銀行に勤めていた。転勤で、他県からやってきた行平と出会い社内恋愛の末結婚。しかし結婚後、行平の強い要望もあり専業主婦へ。共稼ぎの友達には羨ましがられるが、外に出るのが好きな明子にとってはなんとも退屈な主婦業である。 「俺が稼ぐから、明子は家を守ってくれればいい」 結婚のプロポーズと共に言われたこの言葉を聞いた明子は、何とも時代錯誤な考えだと思ったものだ。 始めは退屈な毎日に嫌気がさしてたが、慣れてくるとその自由な時間を楽しむようになってきた。 時間があるお陰で念入りに家事をこなす事が出来る。お陰で家の中は塵一つなく綺麗な部屋が保たれていた。 「よし。これで終わり!」 家事を一通り済ませふと時計を見る。 10時15分。 「さぁて今日はどうしようかな・・」 特にこれといった趣味もない明子だったが、本を読むのは好きだった。しかし、頻繁に新しい本ばかりも買えないので同じ本を繰り返し読んだりするのだが、それも限界に来ていた。 「そうだ。図書館にでも行って見ようかしら」 自宅から少し離れているのでバスを利用しないといけない場所だが、時間はたっぷりある。 明子は身支度を済ませるとマンションを出た。 今日は雲一つない秋晴れの良い天気。 冬の訪れを少しだけ感じながらも、涼しい街の中をバス停まで歩いて行く。 「あと5分か」 明子が住む地域に来るバスは比較的本数が多い。車は持っているが、駐車場の事を考えるとバスの方が効率がいいのでよく利用する。この時間には余りバスを利用する人もいないのか、バスを待っているのは明子一人だった。 時間通りに到着したバスに乗り込む。 何度か行った事のある図書館だが、最近リニューアルされ新しくなったと友人から聞いていた。どんな風に変わったのか、本の種類は多くなったのだろうかなど、色々と想像しながらバスに揺られていた。
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