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✻Takanori✻
ちょうどいい時間。
もうじきこの街がこの海が
オレンジ色に染まる時間。
坂を下りながら見えて来たいつもの海には
水平線に掛かった
太陽から出来た光の道が出来てる。
今日が晴れで良かった。
どこに行くなんて
言葉は無くても
2人の足が向かう場所は同じ。
「今日はオレンジってより
赤だな」
色の濃い夕陽に海も染まる。
いつも降りる階段とは別の方へと歩き
数ヶ月前
夜の海に服のまま飛び込んだ
あの小さな灯台のある防波堤を歩く。
「……また海に飛んだりしないでしょうね」
冗談混じりに留美が言った。
「スマホ置いて来ただろ? 」
ニヤっと笑って言えば
夕陽に照らされた顔が一瞬真顔になって。
「……ウソでしょ……? 」
目を丸くしてオレを見る。
繋いでた手をぎゅっと握り
突然走り出したら
慌てて引っ張られるように
留美も走り出すけれど
「ねぇっ、冗談でしょ! 」
オレはちょっと振り返り
「──どうかな? 」
そう言って
スピードを落とさずに
手を繋いだまま走った。
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