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彼はわたしを色んな所に連れていってくれた。宮崎は彼の出身地だから、観光地と呼ばれる所は全部彼と思い出を作って周った。
愛を確認しあうときは、わたしとクミ姉ちゃんのアパートで。
わたしは彼との行為が堪らなく好きで、自分からも何度も求めた。
彼もいつも応えてくれた。
今日も熱く愛を確認しあった。
わたしは布団にくるまり、彼はライターで煙草に火をつけた。
そんな彼の横顔に見とれてしまう。
……いい男って煙草を吸うだけでサマになるのよね。
「どうした?マリ?そんなにじっと見て」
「ヨシちゃん、わたし行きたいところがあるのよ」
「今度はどこに行きたい?次の休みでいいなら・・」
「ヨシちゃん家!」
ほら、こう言うと彼は少し困った顔を見せる。
「付き合ってもうすぐ3年経つのに、わたしヨシちゃんのお母さんにご挨拶もしていないのよ」
「うちは母ひとり子ひとりで母さんも働き尽くしだからなぁ。なかなか予定が・・・」
「ご挨拶だけでもダメなの?」
彼をこれ以上困らせたくもない反面わたしもそろそろ彼との将来を見据えている。意識している。だってそれが本来女が望む幸せのためだもの。
彼はお母さんと2人暮らしらしいけれど。
だからこそ長男である彼のお母さまを安心させたいのに。
「わかった。考えておくよ」
「具体的に、よ?」
彼の目の前に顔を近付けて、わたしの本気度を示した。
「ぷっ……ははは」
わたしの顔を見て彼が吹き出すものだからついムキになってしまう。
「なによ?急に笑ったりして」
「いや、マリは美人だけど可愛いところもあるなぁ、って。ぷーっと頬っぺた膨らませたりしてさ」
可愛い…なんてわたしのガラじゃないのに。
「おりゃ!」
「…きゃっ…!ヨシちゃん…」
布団の上にまた押し倒されてしまった。
まったくもう……。こういうのに弱いのわかってるくせに。
彼の背中にゆっくりと腕を回した。
再び愛を確認しあう、というとき。
「マリちゃん、ただいまー」
なんというタイミング。クミ姉ちゃんが帰ってきてしまった。
「…あ、あら、ヨシトさん、いらっしゃい!なぁんだ、来てたのね。えっと、3人でお茶でもしましょっか!お茶っ葉がないから急いで買ってくるわねぇ~」
バタン!と扉を閉めて「失礼しましたぁ」とばかりにまたクミ姉ちゃんは部屋から出ていった。
クミ姉ちゃんてばあんなに慌てて……。
「はっははは~!」「うふふふ~!」
彼と顔を見合わせて、思いきり笑ってしまった。
笑いのツボも合う、って案外大事なポイントよ。
彼はわたしを大切にしてくれた。
どちらから言うでもなく、結婚は意識していたと思う。
だけど、わたしは彼のことを知らなすぎた。
彼が抱えた事情を。
こんなにも美しい恋人がいながら、彼がわたしを裏切る日がくるなんて。
わたしも負けじと、彼に対抗するときがなんて。
愛は、人を、確実に狂わせる。
それでも永遠の愛を信じてた。
信じると自分に言い聞かせてた。
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