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回想-1-
最近、あいつがまた悄気ている。
パチンコ屋のスタッフとして働いている店で出会った女、ミエコ。
「ヨシちゃん、お義父さんがまたベッドに入ってきて…それでわたしの体に…!」
ミエコは震えながら俺に相談してきた。
昔から喧嘩っぱやくて怖いもの知らずで生きてきたが、さすがに母親に泣かれてはその道を突っ走る真似はできない。
だから俺は去年 組から足を洗った。
今はミエコの用心棒みたいな役目をしている。
母親の再婚相手――義理の父親にレイプされていると聞いて、頭に血が上った俺はミエコの義父をぶん殴ってやった。
「てめえ、義理の娘に手を出すんじゃねえ!!今度やりやがったらぶっ殺すぞ!!わかったか!?」
「ひぃ~…わかった、わかった、もうやらない!約束します」
情けなねえな。ガキの俺に簡単に土下座なんてしやがって。
「ありがとう、ヨシちゃん!!」
それ以来ミエコの義父は手を出すことはなくなった。
ミエコは恋人ではない。対して器量がいいわけでもない。俺のタイプではない。
だが、何故だか放っておけなかった。
ミエコの母親は水商売に出て、ミエコを放ったらかしにしている。
だから10代の少女がパチ屋で1人でうろついているわけだが。
「ヨシちゃん!」
ミエコが走ってくるのが見える。
仕事終りに夜の公園で待ち合わせしていた。
別にデートでもなんでもない。
ミエコのほうから相談があるからと呼び出された。
「ヨシちゃん、お義父さんが、また・・・」
予感が的中した。
義父がダメなら母親に釘を刺すしかない。
ミエコの母親が水商売に出るのを待ち伏せしてキツく忠告することにした。
「てめえの男が娘に手ぇ出してるぞ!?
てめえの男ならてめえがしっかり躾けろや!?」
派手で下品な身なりをしたミエコの母親は
少なくとも義父よりは気の強い女だった。
「わかったわよ!!あの男の女癖は病気よ!!こんなイモ臭いガキに欲情するんだから!よーーく躾けとくわよっ!!」
喚き散らかし、ヒールを鳴らして家へとUターンしていった。
今夜は修羅場か?
これで一件落着。ようやく肩の荷が降りた。
「ヨシちゃんのおかげだよ、お義父さん、お母さんにこっぴどくシボられたみたい。
今ではわたしの部屋に近付こうともしなくなったのよ」
屈託ない笑顔で、何度も「ヨシちゃんのおかげ」と礼を言うミエコは可愛げのある女だということは間違いない。
俺は若い女が好みだ。美人ならなおいい。
いや、美人しか相手にしない主義だ。
なのに、俺は
いつしか器量が良くないもないミエコと身体の関係を持つようになっていた。
ミエコが自分に惚れているという揺るぎない自信があった。
女に不自由したことない俺が 本当に好きな女ができるまでの「つなぎ」。
そんなふうにミエコを見ていた。
だから、俺は裏切られるはめになったんだろう。
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