回想-5-

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回想-5-

  メグミが俺の実の娘ではなかった。    動揺していないと言えば嘘になるが、メグミはメグミだ。これからも俺の娘として育てていく。例え義父(ジジイ)の血が通っていようが、俺が立派に育て上げてみせる。  それは母さんも同じように決意していた。  ミエコと籍を入れていないことだけが、俺の中で唯一救いだった。    あの(ミエコ)は狂っている。 メグミの成長過程にあいつの存在は悪影響だ。  俺と母さん、そして一人娘のメグミ。  これから家族3人で暮らしていく。  もうこれ以上、メグミを脅かす障害(もの)など何もないだろう。      俺は過去のことを清算するがの如く、ますます仕事に勤しんだ。  ある日ふと目についたアパートにセールスに入った。  何の気なしに叩いた扉の向こうから、まるで鴬嬢のような上品な声がして、俺は一瞬言葉に詰まってしまった。 「はぁい。どなたぁ?」  その上品な声の持ち主は絶世の美女と表現しても大袈裟ではないほど、俺好みの美人だった。  一目惚れだった。  メグミが生まれてから女遊びなど一切忘れていた。  その日のうちに交際を申し込んだらひとつ返事でOKだった。  世間知らずのお嬢さんという雰囲気が逆に高嶺の花を手に入れたようで俺は満足だった。  マリと過ごす時間は居心地がよかった。  このままマリと結婚できれば、と何度も考えたが、マリがメグミを受け入れてくれるだろうか。  付き合って3年、俺は未だにメグミの存在をマリに言えずにいた。    ある日とうとうマリの口からヨシちゃん()に行きたい、母さんに挨拶したいと催促されてしまう。  マリは俺にとって申し分ないくらいいい女だったが、ただひとつ気にかかることがあった。 『高校の先輩と東京に駆け落ちした』その事実が、ミエコ(あいつ)の姿を彷彿とさせたのだ。  女の行動力は、男より逞しく恐ろしい。
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