私立探偵浜野

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 米倉家は、良子の父親が始めたアパート経営を、婿養子に来た旦那が大きくした。今や、このN市やとなりのS市に、十四件のアパートを持つ資産家だ。  旦那は二年前に亡くなった。  一人息子の浩紀というのがいる。歳は二十七歳。不動産会社で地道に働いているという。その気なら、遊んで暮らすこともできるのに、なかなかしっかりした息子だ。  その大事なひとり息子に、悪いムシがついた。それが写真の女、間宮沙織、二十九歳。  ふたりは結婚するつもりでいる。  めでたいではないか、と思うのだが、彼女が高卒で、浩紀より年上で、しかも派遣社員というのが、良子のお気に召さないらしい。  何度も別れるように言ったが、息子も彼女も、耳を貸さない。  おまけに、今や沙織は妊娠しているという。  懇意にしている弁護士を介して、別れ話を持って行ったが、話し合いにならない。子供を堕すように言ってもきかない。  そこで、こんな場末の小さな探偵事務所へやってきた、というわけだった。
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