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「なるほど。で、その浩紀くんというのは、いまどうしておられるので?」
彼女と同棲中なのかと思って、尋ねた。
「ヒロちゃん――いえ、浩紀は、いま家におります」
「ほう、おとなしくしているわけですね」
「座敷牢ですわ」
「は?」
「どうしても女のところへ行くと言ってきかないものですから、座敷牢に閉じ
こめてありますの」
「はあ……」
時代劇ではあるまいし、と思ったが、突っ込みはしない。客商売だ。
「わかりました。お引き受けしますが、一度、浩紀くんと、相手の女性に会う必要があります」
「どうして?」
「ふたりの気持ちしだいで作戦を変えなければなりません。強情であればあるほど、強い手を打ちませんと」
「……しかたありませんね」
「あと、相手の女性、えーと、間宮沙織さんに身を引いてもらうためには、ただで、というわけにはいかないと思います」
「五百万まで出します」
「手切れ金ということで?」
「ごねるようなら、六百万までは覚悟します。でも、できるだけ五百万以内に抑えてください」
「承知しました」
そのあと、料金の説明をし、間宮沙織の住所を聞いて、依頼の打ち合わせは終わった。
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