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しかし、あんなマズいカレーを、少しばかり文句を言いつつもおとなしく食べてやる男など、世界中をさがしてもおれ以外にはほんの百人ほどしかいないはずだ。もっと感謝されてもよいと思う。
カレーライスの件までは、ふだん通りだった。妻が美容院に行って髪の色と髪形を変えたのに気がつかなかったり、お前最近太ったんじゃないアハハハとからかったり、妻がファッション雑誌を見てすてきな服ねとうっとりするのをイヤイヤお前には絶対似合わないからと忠告したり、そんなささいなすれ違いがあっただけで、ごく普通に暮らしてきたのだ。
そうとも、おれには悪いところなどなにひとつない。
〈パパはなにも悪くないぞ〉
そうLINEを送った。
返事はなかった。
寂しかったが、「謝る」というキーワードから、ひとつ思いついた。
間宮沙織に謝らせればよいのだ。
それを念書に書かせて、米倉良子に見せる。
自分でも、よい考えのように思えた。
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