137人が本棚に入れています
本棚に追加
「せっかくだから、肝試しに行こうぜ!」
とある大学のサークル棟に、陽気な声が響く。
声の主はと言うと、大学2年になった私、視世陽木であり、お酒が入ったテンションで言い放ったのだった。
「えぇ、今からですかぁ?」
一緒に飲んでいた後輩が、めんどくさいのか怖いのか、不満げな声を上げる。
「今からですかって、深夜以外にいつ行くんだよ!」
10年以上前の出来事なのでハッキリとは覚えてないが、季節は初夏の頃だったと思う。
これから来る夏本番に向けて、サークルの部室にて私が大好きな怖い話をしていたのだ。
「俺は飲んでないから車出せますけど、どこ行くんですか?」
私と同様に怖い話や怖い映画などが大好きな後輩の1人が、平然と賛成の意を示した。
「あ、そっか。俺以外は全員県外生か。」
その場には後輩が3人いたのだが、全員が県外から進学してきた者だった。
「じゃあ知らないのも無理ないか。この県って、田舎だけどっていうか田舎だからっていうか、とにかく心霊スポットが多いんだよ。」
「えぇっ!?そうなんですか!?」
「まぁ地元の人間でも知らないようなとこもあるから、有名どころってなるとかなり限られてくるけどな。」
少し自慢げに話しながら、酔い覚ましのドライブとしてもちょうどいい距離にある、1つの心霊スポットを思い浮かべていた。
「よしっ、じゃあ行くか!」
「えぇ~、ホントに行くんですかぁ?」
「今からぁ?」
「で、どこ行くんですか?」
私の出発宣言に、三者三様の返事。
そんな後輩を振り向き、ニヤリと笑って私は言った。
「廃墟と化した、精神病院だ。」
最初のコメントを投稿しよう!