恐怖の肝試し1

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「せっかくだから、肝試しに行こうぜ!」 とある大学のサークル棟に、陽気な声が響く。 声の主はと言うと、大学2年になった私、視世陽木(みせはるき)であり、お酒が入ったテンションで言い放ったのだった。 「えぇ、今からですかぁ?」 一緒に飲んでいた後輩が、めんどくさいのか怖いのか、不満げな声を上げる。 「今からですかって、深夜以外にいつ行くんだよ!」 10年以上前の出来事なのでハッキリとは覚えてないが、季節は初夏の頃だったと思う。 これから来る夏本番に向けて、サークルの部室にて私が大好きな怖い話をしていたのだ。 「俺は飲んでないから車出せますけど、どこ行くんですか?」 私と同様に怖い話や怖い映画などが大好きな後輩の1人が、平然と賛成の意を示した。 「あ、そっか。俺以外は全員県外生か。」 その場には後輩が3人いたのだが、全員が県外から進学してきた者だった。 「じゃあ知らないのも無理ないか。この県って、田舎だけどっていうか田舎だからっていうか、とにかく心霊スポットが多いんだよ。」 「えぇっ!?そうなんですか!?」 「まぁ地元の人間でも知らないようなとこもあるから、有名どころってなるとかなり限られてくるけどな。」 少し自慢げに話しながら、酔い覚ましのドライブとしてもちょうどいい距離にある、1つの心霊スポットを思い浮かべていた。 「よしっ、じゃあ行くか!」 「えぇ~、ホントに行くんですかぁ?」 「今からぁ?」 「で、どこ行くんですか?」 私の出発宣言に、三者三様の返事。 そんな後輩を振り向き、ニヤリと笑って私は言った。 「廃墟と化した、精神病院だ。」
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