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「ねぇ……ちょっといいかな?」
どこか不安の混ざった声が後ろからして「どうした?」と振り向くと、彼女は白い棒を片手に俺の前で姿勢を正して正座した。
「できちゃった」
「へ?」
「その……赤ちゃんが……」
見せられたその棒には赤い線が2本、確かにくっきりと浮かび上がっている。
ゲーム脳になっていた俺の思考が一旦停止して、緊張しているらしい彼女――雪の顔をただただ見つめ続けた。
「これは?」
「妊娠検査薬だよ、できてるって反応が出たの」
「そっそうか……」
「やっぱり嬉しくないよね、なんとかして」
「やったじゃないかーーーー!!」
悲しそうな表情を浮かべる雪を、俺は無意識に抱きしめた。
結婚して半年、新生活にも慣れてきてゆったりした休日を送っていたときに届いた嬉しい知らせ。
いつかいつかと思っていたけれど、こんなに早く俺たちの元に来てくれるなんて思っていなかったから理解が遅くなった。
だらけていた思考が一気に動き出し、喜びが体中を巡って体温を上げる。
「嫌じゃない?」
「どこがだよ! 2人の子どもだよ? きっとカワイイ子が生まれて来るんだろうなぁ、俺ももっと頑張らなきゃ」
「陽君、ありがとう」
そうして始まった新しい生活。
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