7人が本棚に入れています
本棚に追加
普段なら子供嫌いの鷹、こんなことを言われたら頭に血が上る思いで負けじと罵声を返すところ。
だけど、この時は変に悲しくなった。
この男の子は、まるで人間に裏切られた猫の様に怯えて、昼間の猫の様な鋭い眼で鷹を睨んだから。
「お前が悟、か?」
優しく言ったつもりが、やっぱり無愛想な声色になった。
男の子は鷹から離れて、防空ずきんを被り直しながら小さく頷いた。
真っ赤な顔をして苦しそう、それでも鷹への鋭い眼差しをやめようとしない。
鷹はまた怒鳴られるのを覚悟して、男の子ーー悟の額に右手を宛てた。
悟は怒鳴りはしなかったが、ただ、鷹の手が触れた時ひどく震えた。
「…悪い、俺のせいだ」
悟が風邪をひいているのが分かって、鷹はずぶ濡れの悟を背負った。
「そうや、お前のせいや、遅すぎるんや、あほたれ…」
鼻声で捲し立てると、悟は鷹の暖かい背中に体重をかけた。
「…あんまりくっつくな、冷たくてしょうがない」
文句を言いながらも鷹は、無意識に口角を上げた。
…
最初のコメントを投稿しよう!