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やがて、うたい手は、みるみるうちに、
立ちあがるのも、一歩ふみだすのも
おっくうになるほどのでかさになった。
そうして、
島でもいちばん大きな岬のふちにすわり込み、
毎日、夕ぐれどきがくると、
海に向かってうたをうたうようになった。
かえるべきところから遠くへだてられ、
さまよいつづける哀しみをたたえたその声を、
ひとたび耳にしたものは、
ひとつの命でしかない小さな自分をとりまく
広い大きな世界とたゆとう時の流れに魂をゆすぶられ、
ただ涙をこぼしつづけるだけになってしまった。
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