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玄関に着くとそこには誰一人として生徒はいなかった。まぁ当然だろう。
「っお! あれか」
玄関の側にあるトイレの前には、いかにも怪しいと言わんばかりのオーラが漂ってくるダンボール箱が一つポツリと置いてあった。
ダンボールには大量のガムテープが頑丈に巻かれていた。危ない物とか入ってないだろうな?
「まぁとりあえず……よいっしょッ! って重!?」
想像の10倍くらいは重たかった。
「いったい何入れたらダンボールをこんなに重くできるんだよ。どうせ化学室に運ぶって事は薬品か何かだと思うけど」
俺はそんな人の体重くらいありそうなダンボールを二階にある化学室に運ぶ為、階段を上がった。
“ッ!“
俺が足場を確認しながらゆっくりと階段を上がっていると誰かが階段を降るように俺の横を通り過ぎて行った。
「あ、あの……」
「何?」
俺が呼び止めるとその女は素っ気ない態度で返信を返した。よく見るとこの黒髪女ここの制服を着ている。
「私に何か用?」
警戒しているのか鋭い目つきでこちらを睨んできている。
「いや……。体育館は下じゃ無いぞ? そろそろ行かないと間に合わなくなるし……」
「そう。それだけ?」
いや、それだけって言われてもな、それだけなんだよな。
「はぁ……。私は今そんな事してる暇ないの。あなたの勝手な正義感で話しかけないで!」
「いやでも……」
「話かけないで!」
そう言うとその女子生徒は俺が今来た道を戻るように玄関前のトイレがある方へと歩いて行った。
本当にこの学校には変わり者しかいないなとつくづく思った。
俺は何事も無かったようにダンボールを運び階段を上り二階にある化学室の前までついた。しかしある事に気がついた。
「鍵開いてねぇじゃん」
一瞬、上の小窓から侵入して開けようとも思ったがそこまでする必要性を感じなかったからやめた。本当は面倒くさかった。
ダンボールは化学室の前に適当に置いておいた。ちょっと疲れたが、窓の外からくる涼しい風のおかげで居心地は良い。
「……。っあ、やべ早く行かないと遅れるな」
少しの間、窓の外の桜の木を見ながら黄昏ていた。それにしても、まだ少し風が冷たいな。
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