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「これで入学式及び始業式を終えます。生徒達は各教室に戻って下さい」
長かった集会が終わると生徒達は颯爽と体育館から退場して行った。しかし校長は未だにステージの上で固まったままだった。
早く誰か校長が本当に仏になってないか確認してやれよ。
そして俺たち及びテレビの人たちは校長を置いたまま体育館を後にした。
「それでは皆さん明日も元気に学校へ来ましょうねでは、さよなら」
「「さよなら」」
帰りの挨拶を終えると生徒達は各自部活に向かったり、そのまま遊びに行ったりする。しかし俺は……
「なぁ蓮。これから一緒にどっか遊びに……」
「勝手に一人で行ってろ! 俺はさっさと帰る!」
「ええ! 即答かよ!」
俺は聖夜からの誘いをいつものように断ると、バックを手に教室を出ようとした。
「待って蓮。今日は私が部活終わるまで待ってくれる約束でしょ? 何、先に帰ろうとしてるのサイテー」
日向は俺の襟あたりをギュッと掴むと俺に罵声を浴びせた。見つかる前に帰ろうと思ったが失敗したな……
「ねぇ、待っててくれるよね?」
「い、いや、だって寮そんな離れてないし別に一緒に帰る必要ないだろ!」
俺が反論すると日向はさらに冷たい視線を向け圧をかけてきた。
「“待っててくれるよね?“」
「分かったよ……」
確かあれは春休み前の事だったな、俺が間違って日向が寮の冷蔵庫にしまっていた何か特別なゼリーを勝手に食べたのだ。それでいろいろあって今日、部活が終わるまで待ってやる事で解決したのだが……
「なぁ日向、テニスの試合ってこんなに長いのか? 何かもっとポンポン打って10分ぐらいで終わるもんだと思ったんだけど」
俺は一つの玉を必死に追いかけて打つ四人の女子生徒をベンチに座りながら眺めて言った。
「ちょっと今集中してるから後にしてくれる? じゃ無いと…… ッア! もーー蓮が話しかけるから私アウトしちゃったじゃん。どうしてくれるの?」
本当コイツ何でも俺のせいにするな。ちょっとは自分のミスだとか思わないのかよ。
「で? あとどんくらいで部活終わるんだ? まだ時間かかるなら俺別の事やってるからさ」
「うーーん。まだ分からないけど、この試合が終わるまではそこにいて!」
まだ分かんないって、もうあれこれ二時間くらい経ってんだが。はぁ……
「……あれ? 蓮君じゃないですか、何で女子テニス部の練習を一番近くから見られるベンチに座りながら見てるんですか?」
ニヤニヤと笑いながら少し鼻につくような事を言った、その長髪の教師は俺の隣にゆっくりと座った。
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