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俺は歯を磨くと寮の食堂に向かい。そこにあったバナナを一つ手にとり、それを食べた。正直、朝からガッツリ食べるタイプじゃ無いからこのぐらいで大丈夫だ。
「あら? 朝からバナナなんて、いやらしい性格してるのね蓮君も」
舞先輩が覗き込むように隣から現れた。
「ビビった……舞先輩ですか。別に俺が朝から何を食べたっていいじゃないですか」
「別に私は蓮君の食べてる物に文句がある訳じゃ無いのよ? ただ朝からバナナなんて食べるから私と同じ趣味があるのかと思って」
「何ですか同じ趣味って。無いですよそんな物。たまたま食べた物が同じだっただけですよ」
俺がそう言うと舞先輩はクスクスと笑うと手に持っていたバナナを見てみろと言わんばかりに前に突き出した。
「残念ね蓮君。私が食べてるのはただのバナナじゃなくて、チョコバナナなのよ。だから蓮くんとは少しレベルが違うのよね」
「そ、そうですか。」
正直どうでもいいから早くその汚いバナナをどけて欲しい。
「じゃ。俺、先に学校に行くので、またあとで。それじゃ」
俺は舞先輩から逃げるように食堂を後にすると玄関へと向かった。バックを手に玄関に向かうとそこには後輩の久美が、扉の前で座っていた。
「えっと、久美さん……だよな? そんな所で何してんの?」
そう言うと久美はゆっくり振り向き笑顔で答えた。
「蓮先輩ですか。実はですね今先輩方の靴が少し汚れていたので、この"落とセール君"と言うスポンジで綺麗にしているんです」
何だよそのいかにも売れてそうな名前のスポンジ。久美は俺に商品でも紹介するかのように熊の形をした、そのピンク色のスポンジを見せてきた。
「それに見て下さいこのスポンジ凄っく可愛いんですよ。なんだか見てると掃除しなきゃってなるんですよね」
久美は凄く楽しそうに言った。まぁ確かに可愛いんだろうな……熊の頭さえ取れてなきゃ。
むしろ良くそんな頭の取れた状態の奴見て可愛いなんて思えるな。
「まぁ後輩だからって、特別そういう事しなくてもいいんだぜ。別に何もしなくても誰も文句なんて言わないしな」
「いえ! 先輩達に仲間と認めてもらえるよう、これからも頑張ります!」
なぜが久美はすっごいやる気だった。どう考えても力の入れ方がおかしい。
「そうか、じゃ俺は先に行くけどお前も遅刻しないよにしろよ。んじゃ」
スリッパから靴に履き変えるとすぐ俺は玄関のドアを開けた。
「先輩! 頑張ってくださいね」
頑張ってください? そんな事この学校に来てから初めて言われたぞ。
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