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俺は歩いても5、10分ぐらいしかかからないようなところにあるコンビニへ、12時にも関わらず、やっとの夜ご飯を買いに車で向かっていた。 一通り夜ご飯になりそうなものと、ついでに缶ビールを2本、ざっとカゴに放り込んでレジに向かう。 計算ミスで金が足りるかどうかギリギリだったが何とか足り、ほっとしながらコンビニを出る。 家に帰り、ご飯を食べながら映画でも見るかなどと怠けたことを考えていると道が古いのか、かなり車が跳ねた。 その衝撃で助手席に置いていたレジ袋から出てきた酒が足元に落ちてしまったので慌てて拾い、再びハンドルを握る。 前を見てすぐ、右のタイヤの前に子猫が1匹いることに気づいた。慌てて急ブレーキを踏むがもう確実に間に合わない。 ダメだ。轢いてしまう。と思ったその時、歩道から赤髪の男が飛び出してきて子猫を抱き抱えたと同時にドンッという衝撃が車に伝わってきた。 今の音は確実に先程の赤髪の男が車にぶつかった音だ。いくらスピードを弛めていたからとはいえ、軽傷で済みそうな音ではなかった気が… 慌ててドアを開けて外に出る。 「っ大丈夫ですか?!」 どうやらぶつかった反動で猫を抱えたまま転がったらしく、衝撃をきちんと逃せていたおかげで見た感じ、そこまでの重症にはならなかったようだ。 「…なんとか」 絞り出したような声でそう答えた彼はゆっくりと上半身を起こす。 その男は見た感じ20歳くらいで髪の毛を赤髪と言うよりかは赤とオレンジの間ぐらいの色に染めている。 顔は恐ろしく整っていて耳にはこれでもかと言うほどピアスを開けていた。 その彼の腕の中にはまだ生まれて間もない真っ黒な毛に金色の目をした猫がミャーミャーと鳴いている。 「その猫君の?」 「野良猫じゃない?良かった、元気だ…」 幸い子猫に怪我はないようだ。 しかし問題は庇って衝突した彼の方。 俺が119番通報しようとすると、彼はかけなくていいと言う。 かけた方がいいと言うのだが頑なにかけるなという。 「なんで119番通報したらダメなんだ?」 「だって今ならこの事故が起きたことは俺とあんたしか知らない。けど119番したらあんた免許証取られるかもよ?俺は別にいいけど。」 「でも…!」 「俺は大丈夫。現にピンピンしてる。」 本当かわからないが確かに見た感じは大丈夫そうだ。
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