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明名side
「ん?美真からだ」
「兄ちゃん?」
「そうそう…え!また熱出したって!」
「兄ちゃん昔から弱いからね」
「どうしよう…まだ帰るまで結構あるし…先生早退してもいい?」
「俺は別にいいけど」
1番保健室に長くいるのは夏月だ。
夏月がいいなら、と職員室へ行き先生に事情を伝える。
だめだと言われたらどうしようと思っていたが、意外と先生達は快くOKしてくれたので、急いで家へ帰る。
「ただいま!」
返事はなかったが、ふと足元も見ると、玄関マットにチェルがちょこんと座っていた。
俺が早く帰ってくるのが分かっていたのかと思うほどに平然な顔をしたチェルは俺が手を洗うと着いてこいと言わんばかりに時々振り返りながら寝室へ向かった。
寝室に入ると美真はうなされていて、酷く汗をかいていた。熱を測ると39.1度もあり、前回熱を出した時よりも高くなっていた。
「美真?おい?」
返事がない。
とりあえず、首と脇の下、内腿を冷やす。
「あれ、あきな…?背中揉んでほし…痛い…」
関節痛ということだろうか。美真の背中を揉みながらふと考える。
まさかインフルエンザ…?
今は5月の初め。こんな時期にインフルエンザなんて有り得るのか…?
「う…っ吐きそ…」
「あぁ、ここに吐いて…」
苦しそうな美真の背中をさする。
この後、食べる事も飲む事さえも全く出来ず考えた挙句、病院へ連れて行くことにした。
「立てるか?」
「うん…やば…全然歩けな…」
俺より14cmほど大きい美真を支えるのはかなり大変だったが何とか車まで連れていく。
普段は助手席に座る美真を今だけ後部座席に座らして、急いで病院へ向かった。
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