0人が本棚に入れています
本棚に追加
1
やあ、こんにちは。
今日はこのクソ暑い中、俺の課外講義に参加してくれてありがとう。
俺はこの講義を担当するアーノルド・ワイズという者だ。
普段はここの大学で少人数向けの講義をしてる。
ん? ライラック・フローレンスのことを知ってるのかい?
へえ、それは意外だな。
一応、ライラからも聞いてると思うけど、俺の専門分野は魔界っていう異世界なんだよね。悪魔っていう異種属が統治してる、あの世界のことだ。
と言っても、あの人たちもあんまり人間と変わらないんだけどね。
だから、どうしても人間界と比較しちゃうことがあってさ。
今回も結構エグい内容になっちゃうと思うんだ。
そこのところは大丈夫?
今ならドロップアウトしても構わないんだけど。
そう、じゃあ始めようか。
そっちだと、今は御先祖様を迎える大事な宗教行事が終わったところだと聞いているけれど、のんびりできた?
俺は魔界のほうで過ごしてたから、なんともね。
俺の故郷でもそうなんだけれど、生死の境界が曖昧模糊となる時期って、それらをテーマにした作品が多く見受けられるんだよね。
戦死者や御先祖様、おもしろいものは動物霊を扱っていたかな。
何で増えるのかって? 単純にテーマにしやすいんだろうね。
死は誰にでも訪れるものだし、死者の抱く感情も想像しやすい。
それが親近者であればあるほど、ね。
そんな数ある作品の中で、俺は少し違う切り口で考えてみようと思う。
誰かの死と切っては切り離せないもの。
それは葬式だ。
昨今は感染症対策ということで、葬式を開くかどうかで悩むというけれど、規模を縮小したり、オンラインでその様子を撮影したりと、様々な対策をしていると聞く。その葬式について、俺は思ったことがある。
例えば、貴方がとんでもなく嫌っている奴が死んだとしよう。
地獄に落ちて死ねばいいのにと何度も考え、そいつが死ぬ場面を何度も想像するくらいには、嫌いな奴。
いないとは、言わせないよ。
自分を嫌いになる奴は地球全人口の二割程度はいるんだから、当然、自分が嫌いになる奴もその程度いるってことになる。
だから、その二割のうちの誰かが何らかの理由で死んだとする。
死んだからには、手順に則って葬式が開かれるよね?
後日、そいつが死んだ知らせと共に、葬式が開かれる旨の手紙が貴方に届いた。本当なら欠席したくてたまらないけれど、のっぴきならない事情で参加せざるを得なくなった。
そこで仕方なく準備をして、貴方は葬式に臨むわけだ。
参列者には、嫌いな奴の親族が涙を流し、悲しんでいる様子が見られる。
そいつにも家族がいて、そいつが好きな奴もいる。
さて、ここで問題だ。
その時の貴方は、どんな表情をしているんだろうか。
想像してみてほしいんだ。
少し時間を上げるから、そこにある解答スペースに書いてみて。どんな意見でも俺は構わないから。
最初のコメントを投稿しよう!