その男、色欲魔王につき

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その男、色欲魔王につき

禍々しいほどに淀んだオーラを纏った黒い西洋甲冑の男が拳を握りしめ、小高い丘の上から平原を見下ろしていた。 「・・・来たな。」 男の視線の先には、広大な平原をゆっくりと進軍する魔物の軍勢が写っている。 それはさながら、地上を流れる濁流のように目の前に立ち塞がるもの全てを飲み込みながら、ただひたすらに人間の領地を突き進んでいた。 ー オオオオォォォ・・・!! オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛・・・!! 魔物の通ってきた道中には多くの村や町があったが、それら全ての建物は破壊し尽くされ、住んでいた住人たちもまた蹂躙されて根絶やしにされた。 いくら大地が炎と鮮血に染まっても、魔物を統べる王の怒りは収まらない・・・。 全てを飲み込んだ濁流は、更に更に先へとその進行速度と勢力を徐々に増しながら進んでいく。 魔王軍進行の知らせが王都に届いたのは、進行開始から三日後のこと。 この時点で魔王軍は人間の領地の三割ほどの侵略を終えている状態だった。 事態を重く見た人間たちによって、情報は精査され速やかに魔物の軍勢の目的地が割り出される。 魔物たちの最終目的地。 それは人間の領地の象徴【王都 ミハエラ】・・・。 今、男が見下ろしている平原にほど近い場所、《アヴァロニア地方》の中心に置かれた巨大都市の名であった。
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