4.帰路

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4.帰路

「結局、あれってなんだったんだろうね?」  帰りのバスの中、部員たちが無邪気に首を傾げているのを聞きながら、私は窓から外の景色を眺めていた。  黒崎のお陰で、実に平和裏に事が片付いた(と思われる)ので、それ以上わかることなどほとんどなかった。  だからただ、勝手に推測するだけだ。  あの後、黒崎からこっそりメッセージが来た。  低い場所に祠や社を作る、「下り宮」というのがあるらしい。  長く連なる鳥居だとか、階段を下りた先にある。日本三大下り宮、と冠された神社もあるが、名もない祠が同じような地形に存在することもあるらしい。  何かの都合でたまたまそこになった、と考えるのが普通だろうが、一説には、よからぬ神がそこから出てこないように祀っている、と言われている場所もあるとかないとか。  僕は見えないので、あとは先輩の解釈にお任せします、とのこと。 『まあ、あそこによからぬものがいたことは、間違いないと思うし。たぶんもう、大丈夫じゃないかな』  私はそう返した。  ――庭石のように見えた、いくつかの背の高い石。  何かの形に組んであったものが、崩れたような。  私が伸びをしながら黒崎の影を待っていた時、その石の後ろからちらほらとこちらを伺う人影が見えた。  古い着物を着た人達。昼だからか、あまりはっきりしない姿だったけど。  向こうがなにもしてこないので、私もなにも言わなかった。  やがて黒崎の影が戻ると、その数が増えた。  そして大人も子供もそれぞれが、こちらに向かって深く頭を下げた。  ……あの方向に、古いお墓がある。 『ご先祖さまたちも、何もできずに困ってたみたいだから。感謝されたってことは、お役に立てたんでしょ』 『僕、それ聞いてませんけど』  送ったら即座に返信がきた。 『その後もなにか言ってきたりするかなーと思って様子見してたんだよ。  結局なにもなかったから、あれで終わり、でいいんじゃないかなー』 『………………………………無事解決したなら、なによりです』 『ねー』  長い三点リーダーに不満をにじませる返信を華麗にスルーして、私はまた窓の外に視線を向けた。  実のところ、そろりそろりと距離をはかってきたけれど、どうやらこの後輩、わりかし素直で扱いやすい部分がある。  見た目も中身も人外なくせに、言動はどこか頑張って恰好つけている気配があって、そりゃー上手に人を遠ざけておかないとマズイよなあ、と思う。  欲にかられた人間はしたたかで、ずる賢いから。 『まあ、また何かあったら、教えてください』  ぽこん、と新たなメッセージが入る。 『あまりホラーにならない範囲で』  かわいいなオイ!!  吹き出しそうになりながら、私は『了解』のイラストを送った。       ◇   ◇   ◇ ☆スター特典追加しました。  スター・コメント下さった方、ありがとうございました。感謝をこめて。
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