執着

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執着

その日の『縁』は今日も賑わっていた。 忙しそうに店内を動き回る祐未に一人の客が声をかけた。 『あの~』 少し力のない声ではあったが、祐未は動きを止めて客に訪ねた。 『ご注文ですか?』 見ると、少々やつれた表情の女性の客が座っていた。 手元には飲みかけの日本酒があり、勇気を振り絞って声をかけるために酒の力を借りたのは明らかであった。 その女性客は小さい声で言った。 『いや、違うんです。お祓いの話を聞きたくて…』 その問いに即座に祐未は反応した。 『わかりました。店長を呼びますね。少々お待ちください。』 店の奥から昇がやってきて対応した。 『いらっしゃいませ。どんなご用件でしたか?』 客の女性は静かに話し始めた。 『半年ほど前から、原因不明の体調不良と不思議な事が起きるようになったのです。』 昇は携帯電話を取り出して電話をかけた。 『兄ィ、依頼っす。』 そう言うと、昇は女性に携帯を手渡した。 『詳しい内容を説明してください。 内容を判断して処置と料金が決まります。』 そう言い残して昇は厨房に戻っていった。 バトンタッチした私はその女性から電話越しに説明を受けた。 まとめると次のような話だった。 半年ほど前から頭痛が始まり、ものが見えにくいことが多くなった。 病院にかかったが原因がわからない。 突然誰かに襲われるような恐怖にかられることがある。 …との内容だった。 念のため、昇の手を借り、ご本人の写真をお送りいただいた。 お送りいただいた写真を見ながら霊視を開始したのである。 写真を見ながら意識を集中し、霊視を始めると…見えてきた。 頭に剣のようなものが突き刺さり、なおかつ、意志を送り込んで操るためにパイプ(というかコードのようなもの)が頭に繋がっているのが見えた。 その女性の霊体は傷つき、オーラのバランスもおかしくなっていた。
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