蜘蛛

1/6

994人が本棚に入れています
本棚に追加
/187ページ

蜘蛛

今日も元気に営業している『縁』。 満席近い状況で店員の祐未も大忙し。 そんな時、入口の扉が開き1人の女性が来店したのだ。 その女性は、たまたま1つ空いていたテーブル席に着くと注文もそこそこに、注文を取りに来ていた祐未に尋ねた。 『除霊をお願いしたいのですが…』 間髪入れずに祐未が尋ねた 『何か体感でもおありてすか?』 女性は答えた 『運気が悪くなって…これ、知り合いからもらってきた気がするので見てもらいたいのです。』 祐未は『わかりました。少々お待ちください。』と答えた後、厨房の奥に消えた。 しばらくして店長の昇が厨房の奥からやって来てその女性に告げた。 『祓ってくれる人に連絡しますね。』 ポケットから携帯を取り出してかけ始める昇 『あ、兄ィすか?お客さんす。』 こうして私が依頼者からの電話を受けたのだった。 依頼の内容はこうだった。 ある時、依頼者の友人の1人が離婚をした。 しばらくしたら別の友人が入院した。 またしばらくしてら別の友人が失業した。 またまたしばらくしたら別の友人が怪我をした。 どう見ても次は自分の番に思える。これは霊の仕業に違いないと思って除霊を受けにきた…との事であった。 早速霊視から始めた。 特に何も見えない…と思ったが、注意深く霊視してみると、ぱっと霊視したときにワンテンポ遅れて消える影があることに気が付いた。伝わってくる波動から、それが魔物の一種であることはわかった。 ただ、それがどんな魔物なのか。どれだけ頑張っても正体はつかめないので、依頼者の女性には結界を張ってお帰りいただくことにした。 当然決着がついていないため、またお越しいただくことを約束し、昇に今回分の料金を払い、連絡先を伝えてお帰りいただくようお願いして今回の処置は終了した。 それ以来、その依頼者の女性がいないところでも、ぱっと霊視を始めるとワンテンポ遅れてサッと隠れる影が見える事に気が付いた。 何度も繰り返し見ているうちに、毎回隠れるそれが蜘蛛だとわかった。 動きが素早くてキャッチできない。 攻撃準備を整えている間に逃げられてしまう。 こいつは厄介だ… 魔物だからと軽く考えていたが、とても厄介な相手である。
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

994人が本棚に入れています
本棚に追加