蜘蛛

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時を同じくして、私を中心にして運気の悪くなる人が増えていることに気が付いた。 離婚した人 癌にかかってしまう人 骨折する人 失業する人 交通事故に遭う人 状況があまりにおかしいのだ。 しかもその現象は私の周囲だけでなく、『縁』の関係者の間でも広がっていることがわかった。 そんな折り、友人から相談を受けたことで原因が判明したのだ。 身体の具合が良くないので見てほしいという知人から頼まれて霊視したところ、人の頭ほどもあるコガネグモの様な魔物が、背中につかまっているのを目撃したのだ。 しかも、結界を張っても破られてしまうことが判明した。 蜘蛛を攻撃しようと試みたが、攻撃しようと思った瞬間に蜘蛛は逃げてしまう。とても素早いのだ。 この魔物は人から人に飛んで増殖し、人のマイナスの想念(恐怖、怒り、絶望感)を好んで捕食しているようであった。 自分の好む想念を食するために、取り付いた人を不幸にする。魔物のパターンである。 私はすぐさま昇に電話した。 『のぼのぼ!マズいぞ!今すぐ店をしばらく休業にしてくれ!』 ビックリした昇は答えた 『兄ィ!無理っす!』 私は引き下がらなかった。 『マズい。運気低下の連鎖が広がるぞ!運気低下の連鎖というより、はっきり言って不幸の連鎖だ。』 突然、そういわれても昇には何がなんだかわからなかった 『兄ィ!突然どうしたんすか?』 私は昇にかいつまんで事情を説明した。 『この前来た女性覚えてるだろ。あの人の話していた不幸の広がりが我々のところでも起き始めている。人と人との交流によって、不幸をもたらす魔物が広がってしまうようだ。対処する手段は今のところない。だから、人と人との交流を止めなくては不幸が広がってしまう。電話もだめだ。とにかくヤバい。この状況だから当面除霊依頼の受付も中止だ。』 昇は驚きながらも私の無理を聞いてくれた。 『兄ィ、わかったっス。店を休業にはできませんが営業時間を短縮し、テーブル席を半分に絞ります。正直、売上の減少はキツいっすけど、お客様に迷惑はかけられないっす。』 その後、私は友人数名に電話をして事情を話し、当面私と連絡を取らないように頼み、大丈夫になったらこちらから連絡する旨を伝えて他の人にも拡散を頼んだ。 わからないことだらけでらちがあかないので、まず人と人との接触を抑え込むことに全力を尽くすことにした。 問題はどうやって戦うかである。 残念なことに、この時点では戦う術が何もなかったのだ。
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