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保育士さん
居酒屋『縁』には、いつもの日常があった。
客がちらほら入り、店主の昇と店員の祐未は忙しく店内を動いていた。
そんな時に店の扉が開き一人の女性が店に入ってきた。
祐未に促されるまま、女性は席に着いた。
注文を取る祐未に、女性は静かに話しかけた。
『あの~。お祓いを受けられると聞いて伺ったのですが…』
祐未が即座に反応した。
『店長を呼びますので少々お待ちください。』
祐未が店長の昇を連れて戻ってきた。
『いらっしゃいませ。』
挨拶する昇に客の女性が言葉を発した
『お祓いしていただけるんですか。困っているのでお願いします。』
慌てる女性をなだめながら昇が答えた。
『お祓いをするのは私ではありません。霊能者の方です。今、連絡を取るのでお待ちください。』
そう言うと昇は携帯を取り出し
『あ、兄ィ。依頼っす。』
軽いノリで私に電話をかけてきたのであった。
話を伺うと依頼者は保育士さん。
勤務する保育園にいると人影が見えたり、ドアが勝手に開く等の不思議なことがよくあり、勤務する保育士さん達の間で騒ぎになっているとの事であった。
依頼者もその保育園に通園しているとだんだん元気がなくなるそうで、困った挙げ句に『縁』の噂を聞き、『縁』を探してやってきたのだそうだ。
昇の話によると顔色も悪く倒れそうとの事だった。
保育士さんを霊視すると脇差(わきさし・小さな刀)が首の横の肩から斜めに心臓の方に向いて刺さっているのが見えた。
脇差を抜き、霊を祓おうとしたが霊は逃げた後であった。
保育士さんの霊体を修復し、エネルギーを補充して数分すると保育士さんの顔に血色が戻り、保育士さんは元気を取り戻したそうである。
保育士さんが、登園してまた霊障を受けないか心配と言うので、保育士さんに結界を張ったのだった。
保育士さんは昇に代金を置いて元気そうに帰って行った。
ところがその後、『縁の“憑依センサー”』の異名を持つ、祐未が不調を訴え、慌てた昇は私の所に再び電話をしてきたのであった。
慌てて霊視で祐未を見ると、祐未の周囲にどう見ても江戸時代の人が複数人見えるのである。
その人達を天に上げ、状況が把握できぬまま考えていると保育士さんの勤務する保育園がとても気になりだした。
保育園の場所は聞いておいたので、Googleマップで場所を確認し、航空写真を見て意識を集中し保育園を霊視すると、江戸時代と思われる白装束に白はちまきをして脇差を持つご婦人を発見💦
さらに戦時中に戦死されたと思われるモンペに防空頭巾をかぶった方まで何人かいるではないか。
同時に見えてしまうと時代錯誤的な感覚に捕らわれてしまう。
素直に感じたことを言うと…江戸時代と戦時中、それぞれ何かあった所にきちんと祓いもせず保育園を建てりゃ、心霊現象始まりますわなぁ…
いや、祓いをしたのかも知れないが、祓いをした者の能力が足らなかったのかも知れない。
江戸時代のご婦人、戦時中の人々。
全ての霊を上げ一段落したのであった。
ただ一つだけ気になることが…
それは保育士さんを守るために張った結界。
恐る恐る保育士さんを霊視すると…やぱり!
結界が強すぎて凄く輝いているではないか。
やっても~た😨
保育士さん。目立ってるやん💦
まぁ、霊に悪さはされないから、
目立つけど我慢してもらいましょう。
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