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胸が落ち着いた俺はふと大事なことを思い出した。実は俺は木登りはできるけれど降りれないのだ。それに降りようとしても木の下はねばねばな種が沢山吹きかけられているから降りられそうにもない。
どうしたものかと考えていると下にいた王子がさっさと降りてこいよと俺に声をかけてきた。
全く、この王子は助けてやった男に感謝の言葉ひとつもないのか。
俺は恥ずかしいところはあまり見せたくないため「俺は1人で帰るから、先帰って。」と言った。
最初こそ王子様と呼んでいたし、敬語を使っていたがこの王子のことを見る度に様付けするほどの王子なのかと疑問に思えてきたためもう敬語を使うのも、様と呼ぶのもやめることにした。
まあこれっきりの付き合いになるだろうと思いながら俺は王子が行くのを待った。
しかし、王子は一向に行こうとしなかった。
何故だ、お前が行ってから1人で降りる方法を考えようとしていたのに。
俺は訳が分からなくなり、王子に声をかけた。
「あの〜、王子さん?
早く行ってくれません?」
俺がそう言うと王子はお前が降りてから帰る、と言った。
は?何なのこの王子。
俺が降りれないところ見て馬鹿にするつもりなの、悪趣味が過ぎるでしょ。
俺は思わず言葉を詰まらせた。
「…あ〜1人で降りれるんで大丈夫ですよ?」
「じゃあ今降りればいいだろう。」
ぐう、正論………。
俺が言葉を詰まらせていると王子が突然両腕を広げた。
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